信州魅力人

信州の魅力、それは長野県内で頑張るつくり手たちの魅力。そんな魅力人の想いをお伝えします

地域性や文化性が、もっと強い地域を作る

南信州ビール駒ヶ岳醸造所の所長・竹平考輝さん。ビール会社に勤めているのだから、お酒はもちろん…と聞くと「お酒はまったく飲めませんでした」と意外な答えが。聞けば、今の仕事をする前は、電子部品会社でサラリーマンをしていたといいます。インタビューの2回目は、竹平さんが考える「お酒の文化」、そして「地域の文化」について伺います。

「機能」から「感性」の世界へ

南信州ビール(駒ヶ根市) 竹平考輝さん

ここに入る前は、電子部品会社で普通のサラリーマンを12、3年していました。たまたまそこを辞めたころに、私の弟が「南信州ビール」で経営しているレストランの料理長になったんです。それがきっかけで「人が足りないからアルバイトしない?」と言われて「いいですよ」と。最初はレストランでビールをついでいました。

あるとき、ビール製造の設備がトラブルを起こしたということがたまたま耳に入り、前の会社でメンテナンスなどをやっていたので「たぶん直せると思うよ」って、直したんですよね。そうしたら「そういうことができるんならこっちで働け」と言われて製造のほうで働くようになりました。

-最初は商品開発とはあまり関係なかったんですね。

でも、それから醸造などビールを作るほうのことも覚えていく中で、面白い発見をしたんです。それまでは工業系の仕事をしていたので、機能がはっきりしている世界だったんですよ。お酒の世界でいえば、機能はアルコールで「酔うか酔わないか」ですよね。でもそれとは別に嗜好の世界がある。「○を出す人もいれば×を出す人もいる」ということに非常に興味が出てきました。人の感性に頼る部分が大きい世界に飛び込んだことによって、視野がワーッと広がったんです。ああ、なんでもできると。それでもう、のめりこむような感じで。○か×かのどちらかを決めるのではなく、その人がおいしいって思って、その人の中で100点だったらいいじゃないのって。それを認められるようなお酒の文化ができたほうがもっと面白いんじゃないかって。

-それぞれの判断というか、好みが認められればいい、と。

南信州ビール(駒ヶ根市) 竹平考輝さん

私のこだわりは「固執したこだわりがない」ことなんです。皆、結構こだわりを持っていますよね。農家さんだったら「絶対無農薬」とか。それは大事なことだし否定はしないんですけど、ただ、商売として考えたときに「無農薬=おいしい」というイメージになってしまっている。そのこと自体がおいしさだと押し付けるのではなく、それはそれ、あとは皆さんに判断していただくというスタンスでいたいですね。農薬を使っていてもおいしいものだってありますし。作っているほうのこだわりを変に商品化してしまって、お客さんの独自の判断をにぶらせるようなことをするのであれば、あまり押し付けずにフラットにしたい。「こだわらないこだわり」というのは、そんな感じの意味合いです。

正直に言えば「アップルホップ」もリンゴの種類で味が変わるので、紅玉は好きだけど、ふじは…というお客さんもいれば、ふじが一番好きだというお客さんもいる。最近は「去年の紅玉よりも今年の紅玉は…」とワインみたいに比べて楽しんでくれる人も増えてきました。いろいろな人がいることが楽しいし、いろいろな反応を見られるのが嬉しいです。だからいろいろなタイプを作っているという感じですね。

地域性や文化性が、もっと強い地域を作る

「農家のところまでつなげたい」ということを言いましたが、最終的には消費者の方に「すべてが限りのある中で、消費者に届けられている」ということを感じていただけるようにしたいと思っています。大手メーカーではできないことを、我々のような企業ができる限り頑張ってフォローしていかないと、おかしな世界になってしまいそうな気がしますね。過剰にやりすぎてしまっているところもあるように思いますが、もっと純粋に、もう一度、地域文化や食の文化、ビールの文化…いろんな文化性の高いものを構築していって、将来につなげていきたい。日本は昔からいいものがあるのに、合理化だとか、資本主義的な考え方から全部淘汰されちゃって、ふと疲れたときに周りを見ても、癒されるようなものってあまり多くはないですよね。ビールや発泡酒など、お酒まわりのところでそういったものが表現できたらいいなと思います。

-食文化とか地域の文化を理解してもらいながらお酒を楽しんでもらう感じですね。

そうですね。今、宮田村の「新食材プロジェクト」に参加していて、地元の企業と一緒に新しい何かものを作ろう、探そうということも進めています。ビールとは直接関係ないんですが、考え方はすべてに通じるものなので。

-今後は何か商品展開などは考えていますか?

南信州ビール(駒ヶ根市) 竹平考輝さん

今後は、リンゴ以外のものも展開していければと思ってはいます。ラ・フランスを使ってみようとか、いろいろな農家さんからの持込もあったりして。でも今はほかのことでも忙しくなっちゃったので、ちょっと止まっています。

1 2

このブログのトップへ

このブログへの取材依頼や情報提供、ご意見・ご要望はこちら

営業局
TEL:026-235-7249
FAX:026-235-7496