2011.05.09 [長野県地域資源製品開発支援センター 鈴木進さん]
三方一両損を、一両得に
これまで「信州魅力人」では、県の地域資源製品開発支援センターに支援を受けながら事業を進めてきた方々に登場していただきました。「地域を元気にしたい」「受け継がれてきた伝統工芸を発信していきたい」「良いものを作って皆さんに届けたい」といった事業者の思いに寄り添い、具体化のための支援を行ってきた同センター。今回は製品開発総合プロデューサーの鈴木進さんにお話を伺います。
三方一両損を、一両得に
-センターでは、どのような支援を行っているんですか?
センターの目的は、売れる商品づくりを応援することです。具体的には商品開発、商品化、ブランド化ですね。センターができたのは2008年の4月で、これで3期が終わったことになりますが、相談件数は2008年度108件、2009年度137件、昨年度は140件くらいですね。3年間で約90件を商品化しました。
事業主さんがいて、実際に支援するメンバーがいて…1チーム、3~4人で取り組んでいます。私は接着剤というか、事業主さんや各専門家メンバーをつないでいくのがプロデューサーの役割だと思っています。パッケージなど、デザインの製作は多くは県のデザイン振興協会と連携して進めています。振興協会以外のデザイナーさんもいますが、基本的には県内の方にお願いしています。地元がわかってなければ良いデザインはできないと思います。地域のことがわかっているデザイナーさんでなければ、お客さんの心を打つようなデザインはできませんから。
-具体的にはどのように進めているんですか?
最初は三方一両損なんです。これまでデザイン料を払ったことがない事業主さんは、まずデザインのためにお金を出す。デザイナーさんは多少安く受注する。そして県はお金を一部負担する。三者とも少しずつ損というか、負担するかたちです。でも、デザインをきちんとすれば売れるようになります。すると、事業主さんは売れたからまたデザインをお願いしようと思う。デザイナーさんは仕事が増える。そしてものが売れて地域の活性化につながれば県も潤う、と。三方一両損を一両得にしていく、ということですね。
事業主さんがデザインにお金を出すという文化は、残念ながら日本にはまだ育っていません。「ちょっとおごるから頼むよ」くらいでやってきている。それを変えなきゃいけないというのがセンターでやっていることですね。デザイン機能の価値を知ってもらって、それに対してお金をかけなきゃいけないと思ってもらえるようにね。時間はかかるでしょうが、長い目で見ながら。でも、この仕組みで支援して、事業主さんがデザイナーさんと直接契約して進めていく素晴らしい事例も出始めています。
「基本価値」と「感性価値」
-事業主さんとはどのようなことを話していくんでしょうか?
まず大事なのは考え方ですよね。商品というのは何でも2つの価値から成っています。それは「基本価値」と「感性価値」。基本価値は商品そのものの価値です。感性価値はわかりやすく言えば好き嫌い。魅力や主観の価値です。
基本価値は例えば「ポリフェノールが何%入っている」など数値化して証明することができます。例えば、価格を小さく(安く)すると、分母が小さくなるので価値が上がりますよね。あとは、たくさん機能を付けると、分子が大きくなるので、価値を高めることができる…といっても今は、過剰品質という感じがしますけどね。でもこれで日本の商品は売れてきたわけです。
しかし、センターが目指しているのは価格や機能ではなくて、感性の勝負。デザインやブランドという魅力で価値を高めるんです。これはもう、主観的な価値で、嫌いだったら「ゼロ」になってしまいます。どんなに安くても高機能でも、嫌いだったら買わない。逆に、「(高くても機能が付いてなくても)好きだから買っちゃう」ということがありますよね。
-でも、好きになってもらうと言ってもなかなか難しいと思うのですが…。
「人の好みは十人十色」なんて言っていたら一人一人全部変えなきゃいけない。それは産業ではないですよね。でも、ある程度顔が見えればイメージが沸きます。世代や男女、あとは都会か地方か…そうやって明確にしたターゲットに向けて「あなたが好きだと思えるもの」を提供することはできるはずです。
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