2013.06.25 [ 信州大自然紀行環境保全研究所飯綱庁舎 ]
虫倉山(骨のある山、長野市中条)
長野市中条にある虫倉山(標高1378m)は、人里のすぐ近くにあるのに、山姥(やまんば)がいたとも言われるような骨っぽい山です。この山をつくっている荒倉山層という地層は、今から400~500万年前の海底に噴出した溶岩類と火山灰が固まった地層です。ちょうど戸隠山の大岩壁をつくっている岩と同じ時代の、同じ種類の地層であり、周りの岩石よりも硬いために侵食に耐えて、フォッサマグナの他の多くの山々からひとつ頭が抜き出た山になっています。したがって、山頂からの眺めのよいことは折り紙つきなのです。とはいえ、いつでも眺めがよいわけではありません。
ちょうど夏至となった先週金曜日は梅雨前線が活発となり、山頂の景色はご覧のとおり「遠くの山はな-んもみえまっしぇん」という状況でした。まあ、こういう日もあるから、山で晴れた日のうれしさが格別なものになるわけですね。でも、登山に来ている人は誰もおらず、ハルゼミも鳴りをひそめ、涼しくて静かな山はそれもまた良しでした。ここでは、稜線近くの「あずまや」に丁寧に描かれていた北アルプスの山並みをご紹介します。これは誇張ではないです。本物の眺望は、晴れた日にぜひ自分の足と目でお確かめください。
登山道としては「不動滝コース」という道が歩きやすくて一般的ですが、虫倉山の骨を感じたいという人には「さるすべりコース」がよいかもしれません。鎖場となっている険しい岩を越えていくので、それなりの経験と覚悟が必要ですが、ゴツゴツの凝灰角礫岩に取り付くとかつての海底火山の激しさを少し実感できます。
駐車場とトイレがある登山口から、さるすべりコースをたどって山頂までは徒歩約1時間。そして山頂から「不動滝コース」を下れば、1時間もかからずに最初の登山口に戻ることができるでしょう。
この日、ちょうど地元の方々が駐車場の草刈りとトイレの清掃に汗を流しておられました。この時期、月に2回は手をかけているとのこと。山道も道標も気持ちよく整えられていて、この山が大切にされていることがよくわかります。そういえば、この山に伝えられている山姥は、じつはやさしいこころをもっていたそうです。
虫倉山にて
~ 山姥(やまんば)の笑みこそ幽か 梅雨の星 ~
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