2017.03.27 [長野県大町岳陽高等学校教諭 大西浩さん]
高校教諭×山岳部 vol.1
- 山岳協会がそんなことをやっていたんですね。
実際に行った先生たちは、登山技術を身につけるだけではなく、麓の生活にも触れる。向こうの子どもたちは、一生懸命に仕事をしたり、泥まみれになって家の片づけをしたりしているそうなんです。日本へ戻ってきて、学校でそういうことを生徒たちに伝えるんですが…やっぱり生で見るのとは違う、だったらもう連れて行っちゃえ!と。
長野県山岳協会50周年記念事業として登頂したヤズィックアグル峰(中国新疆ウイグル自治区)、中央が大西さん
- え?生徒たちを中国へ?
県山岳協会で中国へ行った教員仲間と山岳会を立ち上げて、教育委員会にかけあって実現させました。1988年に第1回隊を中国・四川省へ連れていきました。行く前には1年間、しっかり訓練をします。翌年、第2回隊も準備をしていたのですが、1989年6月に天安門事件が起こりました。7月に行くことが決まっていたのですが、渡航禁止令が出て…。
- 1年間準備していたのに直前で…。
今でも覚えていますが、生徒たちがそれぞれ、自分の思いを語るんです。皆でチームワークを作ってきて、さあ行くぞというときに、こういうことになってしまった。でも、どうしても行きたい、皆、行きたいって言うんです。気持ちは分かるけど、大人としては連れていけない。
- 先生にとってもつらいですね。
申し訳ない気持ちでいっぱいでした。それで翌年は、新たに募集した生徒と、前年行けなかった生徒も一緒に行きました。その後、取り組みは6年間続けて、いったん中断しましたが、とにかく「高校生に夢を与えたい」という一心でやっていましたね。
- 高校生で海外の山を登るなんて、大きな夢です。
私も引率で、91年に中国・青海省に行きましたが、経験すると生徒たちは本当に変わりますよ。
その後、大西さん自身も海外遠征へ。1993年にはアリューシャン列島へ行き、5つの島を渡り歩き、7峰を踏破しました。1999年からは「まだ誰も登っていない山」「標高6000メートル以上」「高校生に夢を与える」をコンセプトに、中国・新疆ウイグル自治区、崑崙(クンルン)山脈の未踏峰・カシタシ主峰(セリッククラムムスターグ、6691メートル)に挑戦。偵察を含め3年がかりで登頂に成功しました。「おじさんでも夢を追う姿を見せることができたかな」と笑う大西さん。次回は山岳部がどのような活動をしているのかを伺います。
PROFILE
1960年、長野県松本市生まれ。信州大学人文学部卒業後、国語教諭として県内各地の高校に勤務。2014年から現在の大町岳陽高校で山岳部顧問を務める。長野県山岳協会理事長、中信高等学校体育連盟登山副委員長、信濃高等学校教職員山岳会所属。「高校生に夢を」がモットー。
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