2015.02.02 [浅間山クラブ(小諸市)事務局長 栁田住吉さん]
古くから親しまれてきた浅間山。危険もあるが、恩恵も受けている
火山について知り、上手に付き合うことが大切
- 県内で活火山というと、浅間山を思い浮かべる人も多いと思います。
浅間山は日本でも有数な活火山で、有史以来数多くの噴火を繰り返してきました。1911(明治44)年に日本初の火山観測所が設置され、ずっとデータを記録しています。気象庁や各大学が観測・研究を行っているので、火山活動に関するデータは豊富です。データがないと予知することは難しい。火山性微動や地震の回数など、どのくらい増えれば噴火しているかというデータがあって、はじめて推定できるようになります。今は、地震計や傾斜計も数多く置かれ、国土交通省や各市町村のライブカメラも付いていて、様子を見ることができます。
- 火口近くまで行くことはできるのでしょうか?
現在、気象庁の噴火警戒レベルは1(平常)で、火口から500m以内は立ち入り禁止です。1973(昭和48)年2月1日に中規模噴火があり、それ以降規制がかかりました。シェルターも2カ所作られました。
浅間山のシェルター
- 住民の皆さんは、普段から何か気にかけていますか?
噴煙の量は日によって変化しますが、全く上がっていないということはありません。風の向きの関係で、肉眼では見えないときもあります。小さな噴気孔があり、常にそこから水蒸気も出ています。山を見ながら「最近は落ち着いてるな」と思うことはありますが、あまり深刻には見ていませんよ。奈良時代から地元ではずっと親しまれている山ですから。
御嶽山のこともあり、火山は恐ろしいという印象が先行しているかもしれませんが、昔、火山灰が積もったところが野菜の良い大地になったり、温泉が楽しめたりと、火山は恵みも与えてくれています。火山と上手に付き合っていければいいですね。
- 上手に付き合うには、どうずればいいのでしょう?
まずは、火山のことについて知ることが大切なのではないでしょうか。火山の研究者はたくさんいるので、私たちも一緒に学べる勉強会を催したり、冊子やインターネットを使って情報を発信したりしています。さまざまな機会を通じて、火山とはどういうもので、こういう場合は危険だということを知ってもらえればと思います。登山者の中には、あまり気にせずにやってくる人もいますが、情報を確認して、活動が活発になっている場合は細心の注意を払ってほしいですね。
- 浅間山登山でほかに注意しなければいけないところはありますか?
浅間山は、あまり傾斜がきつくないので、気候さえ良ければそんなに心配しなくても登ることができます。ただ、標高は2500m以上あるので、その備えと心構えは必要です。
最初は樹林帯の中を森林浴しながら歩き、2000mを越えると大きい樹木はなくなります。その先は小さい高山植物はありますが、足元はゴロゴロした石と砂になっていきます。森林限界を越えた先は、火山特有の風景が広がります。
第二外輪山の前掛山からの展望も非常に素晴らしいです。南側から全て、関東平野から始まり富士山、八ヶ岳、中央アルプス、北アルプスと見ることができます。
特有の自然景観や、地球の息吹を身近に感じられるのも火山でしか味わえない楽しみ。火山を知ることによって、より安全に楽んでもらえればと思います。
1997年にモンブラン、マッターホルン、アイガー、2002年にヒマラヤ・チョーオユー(8201m)など世界の名立たる名峰に登頂してきた栁田さん。「だからこそ、浅間山の魅力を改めて感じている」と話します。次回は、浅間山周辺の魅力と最近の様子、そして事務局長を務める浅間山クラブの活動についてもお聞きします。
PROFILE
1951年、長野県小諸市生まれ。20歳ごろから本格的な登山を開始。1974年から浅間連峰地区遭難対策協議会補導員(相談員)・救助隊員として現地での活動に協力。2005年に発足した「浅間山クラブ」の事務局長を務める。
長野県自然観察インストラクター、日本山岳ガイド協会自然ガイド、高山植物等保護指導員
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