2011.02.17 [創作染工房 久(飯田市)中島いづみさん]
着物以外で、型染めの体感を
古くから絹製品の産地だった飯田・下伊那地方では、柿渋紙製の染型が受け継がれてきました。「KINU*WASHI(きぬわし)」は、その染型を使い小紋型染めした絹を、飯山地方伝統の「内山紙」に貼り合わせた生地を使ったブランドです。小紋型染めの保存と普及のためにブランドを立ち上げた、「創作染工房 久(ひさ)」のブランドマネージャー・中島いづみさんにお話を伺いました。
着物以外で、型染めの体感を
-「KINU*WASHI」開発のきっかけは何だったんですか?
私がここに嫁いできたころは50軒ほど染色に携わっている業者があったんですが、今は2軒になってしまいました。着物を着る機会が少なくなって需要が減る中、この型染めを着物とは違うかたちで体感していただければ…と模索する中で生まれたものです。
型染めを何か伝統的なものとマッチングさせたら面白いなと思っていたんですが、当初、絹はまったく考えていなくて。そもそも最初は型染めの型のデザインを提供できればと考えていました。例えば、型をデジタル化して使えるようにするとか、品物というよりも型のデザインを利用できたらってところが出発点だったんです。
そこで県の中小企業振興センターに相談したんですが、「和紙に印刷したらどうか」って話が出ました。それは面白いと思ったんですが、技術的に難しいということになりまして…。そんな時に「いっそのこと染めたものをくっつけちゃったら?」って下の息子に言われて、「あ、それはいい!」と(笑)。
-なぜ内山紙と組み合わせようと思ったんですか?
長野県の素材を使って何かできれば、ということは考えていました。長野県には伝統的なものがたくさんありますが、内山紙は全国的にも知られているので。
たまたま、内山紙を製造・加工する「阿部製紙」に平田さんという若い人が弟子入りしたという記事を新聞で見たんです。若い人が弟子入りするくらいだから、何か魅力があるんだと思って気になって。そこで、なんとか平田さんに会わせてほしいと中小企業振興センターの方にお願いして、会わせていただきました。2010年の1月15日のことです。そこでもう、その日のうちに絹と和紙を貼りましょうって決めてきちゃったんです。
-初めて会って、その日のうちに決めちゃったんですね。
そうですね(笑)。阿部製紙さんでは和紙同士を貼り付けることはあったそうですが、和紙と絹を貼るというのは初めてだったみたいです。それでもやってみたら結構うまくいったみたい。自然素材同士だから相性が良かったのかな、と思います。
でも、グッズにはなかなかたどり着きませんでしたが、地域資源製品開発支援センターに相談しながら、何とかかたちになりました。ブランドの名前やロゴも決めて。商品化は難しかったですが、楽しかったです。みんなで「こんなふうに」「あんなふうに」って言いながら進められたので。
シルクスクリーンで復活した昭和初期の型
どのくらいあるのかは数えたことはないですが、柄のパターンはたくさんあります。でも、何十枚も焼いてしまって…。高度成長期のころは需要が多くて、とにかくものを出せば売れる時代だったので。型染めじゃそれに追いつかないからダメだ、じゃあ型も必要ないってことで、このあたりの業者はみんな焼いてしまいました。今思うと、なんでそんなもったいないことをしたんだろうと思いますけどね…。
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