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制約を乗り越え旨くなる長野の米づくり

不毛の地から県内で1・2を争う米どころへ
倉科農園 倉科 孝明さん

「長野県と一言で言っても、地域によって土地の成り立ちが全然違う。この辺りは砂礫だけど、県内には粘土質の土地もあるし、地域ごとに様相が異なります。各地域で土地の特色に応じた栽培技術が研究され、発展させてきました。自然環境に加え、人々の工夫や知恵が県内の米を美味しくしているのだと思います」

こう話すのは、松本市梓川地区で農業を営む倉科農園の倉科孝明さん。

松本市梓川地区は松本盆地の梓川以北から安曇野市や大町市付近まで広がる北アルプス山麓の「安曇野エリア」に位置しています。安曇野では豊富な湧水を生かしたワサビ栽培が盛んにおこなわれるなど、安曇野というと水が豊富なイメージがありますが、かつては、水の乏しさから荒涼とした原野が広がっていたというから驚きです。その理由は北アルプスから流れ出るいくつもの川が重なり形成された複合扇状地という全国的にも特異な地形にあります。

「安曇野は扇状地の上流、中腹、末端とで様子が異なります。北アルプスの雪解け水は、地下を浸透して、扇状地の末端部分に湧き出ます。そのため、末端部分はわさびの栽培が盛んにおこなわれるほど水が豊富です。一方で、中腹は川の堆積物の砂礫層が主体の土壌のため、水が地下深くへと浸透してしまうことから、表面に水がない状態でした。ここ梓川地区はまさに中腹の表面に水がないエリアなんですよ」と倉科さん。

北アルプスという水の宝庫を持ちながら、地表に水がない状態だった安曇野。そのため、水を確保する努力が続けられ、長い年月をかけ、水路が毛細血管のように張り巡らされてきました。縦堰と呼ばれる河川から直接取った縦に流れる水路が作られることが一般的ですが、等高線とほぼ平行に水路が走る横堰こそが安曇野の特徴です。横堰は広いエリアに水を運び土地を潤すことができる一方、複雑な地形を読み解き、等高線沿いにわずかな傾斜で水路を引く必要があり、開削には極めて高い測量技術、建設技術が要求されました。

安曇野では1654年の矢原堰の開削に始まり、6本もの横堰が開削されました。特に有名なのが、1816年に作られた拾ケ堰。奈良井川から水を取り、複合扇状地の中央を等高線に沿って横切る、約570メートル、約1,000ヘクタールの水田を潤す安曇野随一の大水路で、今も現役で安曇野の地を潤しています。

時代が下り、昭和初期になると電源開発でダムが建設され、大きな用水路も引かれるように。1965年頃から始まる構造改善事業では圃場整備が行われ、20~30アールの田んぼが四角く整備されたことに伴い、大型の機械による刈り取り作業も可能となりました。

「稲作に欠かせない水を引くために、先人たちは相当な努力をしてきました。そのおかげで、今ではこの地には豊富な水が行き届き、圃場も整備され、とても米作りがしやすい環境です」と倉科さんは話します。

このような人々のたゆまぬ努力の積み重ねにより、安曇野は不毛の地から米どころへと変貌をとげたのです。

▶次ページ「長野県オリジナル米『風さやか』」

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