じょうしょう気流 「上小(じょうしょう)地域」と聞いて、みなさんは長野県のどの地域を思い浮かべますか?「上小地域」は、上田市、東御市、小県郡長和町、青木村の2市1町1村からなり、群馬県の西側に接する地域です。「上小」には自然、歴史、文化、おいしい農産物など、さまざまな魅力がありますが、それらを上田合同庁舎の職員の目で見て綴り、皆さんにご紹介してまいります。

じょうしょう気流

「上小(じょうしょう)地域」と聞いて、みなさんは長野県のどの地域を思い浮かべますか?「上小地域」は、上田市、東御市、小県郡長和町、青木村の2市1町1村からなり、群馬県の西側に接する地域です。「上小」には自然、歴史、文化、おいしい農産物など、さまざまな魅力がありますが、それらを上田合同庁舎の職員の目で見て綴り、皆さんにご紹介してまいります。

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アメダス、雨出す、雨ですよ(上田地域気象観測所)

 毎日の天気予報や気候統計資料に欠かせないアメダスは、地域気象観測システム(AMeDAS)の略語ですが、「雨出す」というズバリの語感もあって、ニュースなどでも注釈なしに使われています。
 上田のアメダス(標高502m)は、合庁(標高446m)の東の河岸段丘上にある上田市上水道の染屋浄水場の敷地内に置かれていますが、場所柄もあり、読者の皆さんを代表して写真を撮ってきました。
 設置は昭和51年(1976年)3月16日で、雨量、気温、風向風速、日照時間の4つの観測を無人で自動的に行い、データを送り続けています。上田のような4要素観測所は全国に686箇所(21㎞メッシュ)あり、管内には菅平東御(新張)にもあります。また、鹿教湯には、雨量のみのアメダスが設置されています。(雨量計は気象官署クラス以下各アメダスに共通して置かれており、全国で約1300地点を数えます。)

 浄水場のろ過池の向こうに、低い柵で囲まれた一角が見えます。大小の電柱が4本建っています。左の主柱のてっぺんの「プロペラ飛行機」が気になりますので、近くに行ってみましょう。

【①全景】



  プロペラ飛行機の正体は風向風速計(④)で、地上高6.5mとのことです。この測風塔は、先端近くに日照計(④)を、地上1.5m(大人の目の高さ)には温度計(③)も固定しています。なお、右側の高い柱は給電用の電柱で、その奥の短い柱2本はデータ送信用ISDN回線の電信柱です。
 地上直置き(基礎あり)の高さでは、右側手前の白い箱がデータ変換処理装置(⑤)で、その左奥の逆さひょうたんのように見えるのが雨量計(②)です。
 それでは、雨量、気温、風向風速、日照時間の順に、個別の気象測器(拡大写真)を見ていきましょう。


【②雨量計】



 アメダスの名前由来の降水量は、転倒ます型雨量計で測定しています。受け口の内径は20cmで、雪やあられなどはヒーターで融かして測ります。
 転倒ます(枡)は、雨水が溜まると傾いて排水される左右2つに仕切られたますで、シーソーや「ししおどし」をイメージしてください。最初は左側の枡に雨水が溜まるとします。すると枡は左側に傾き排水されます。と同時に今度は右側の枡で雨水を受け、溜まると右に傾き排水します。次は、……と左右交互に繰り返されます。1回の転倒が雨量0.5ミリなので、降水量は転倒した回数×0.5で求められます。
 自動・無人の観測技術は、人間の目視や五感・手仕事でない発想が求められますが、一方で伝統文化の「ししおどし」の原理の応用でもあり、雨の日は測器がメトロノームのように動いていることを想像しただけで、楽しくなります。

【③温度計】



 気温の測定で思い出されるのは、小学校の中庭の白い百葉箱と細長いガラス棒の赤液の温度計でしたが、今や民生用でもデジタル温度計・体温計が普及しています。これは、金属の電気抵抗が温度の上昇に比例して直線的に増加する性質を利用しています。
 そして、21世紀の百葉箱は外気を取り込む電動ファン付きの通風筒(写真)となり、直射日光を遮っているので見えませんが、この中に電気式温度計が入っていて、白金(金属)の電気抵抗値を計測し、温度に換算し出力しています。

【④風向風速計】【④日照計】



 柱(測風塔)の先端の風車型の風向風速計(写真上部)は、流線型をした胴体に垂直尾翼と4枚羽根のプロペラが取り付けられています。垂直尾翼により風が吹くとプロペラが風上に向くように回転し、胴体の向きからは風向(16方位)が、プロペラの回転数からは風速がわかる仕組みになっています。
 他の測器は静的ですが、この風見鶏はくるくるとよく動くので、見ていて飽きません。気象観測所の象徴になっています。
 一方、回転式日照計(写真左下)は、水平方向から緯度分を傾けて真南に突き出したガラス円筒の中に、30秒に1回転する反射鏡を入れたもので、反射鏡により反射した太陽光をセンサーで受光し、受光した光のエネルギーが0.12kW/㎡以上の場合(=日影ができる程度の日差し)に、2分ごとに<日照あり>としてバルス信号を一つ出力するものです。
 上田地域が全国に誇る長い日照時間を、この日照計が測っているのです。無機質なマテリアルではありますが、他の地点の測器よりも「長く働いていてくれてありがとう」と言いたいです。

【⑤データ変換処理装置】



 これまで見てきたように、アメダスは柵に囲まれた芝生の露場があり、その中に気象測器部と変換・処理部の2つから構成されています。後者のコンピューターの部分は有線ロボット気象計と言い、頑丈な筐体(写真)に収納されています。観測で得られたデータはISDN回線などを通して気象庁内の地域気象センターに10分ごとに自動的に集信され、データの品質チェックを経たのち全国に配信(→アメダス実況等)されます。アメダスの詳細については、日本気象協会のウェブサイト(tenki.jp)をご覧ください。この記事も、これを参照・一部引用しています。

【参考】
 アメダス(AMeDAS)は、Automated Meteorological Data Acquisition Systemの頭文字をとったもので、「地域気象観測システム」が正式な日本語名称です。(記事冒頭のとおり)
 個々の単語の意味は、Automated(自動化された)、Meteorological(気象上の)、Data(データ)、Acquisition(取得)、System(システム)なので、直訳の「気象データ自動取得システム」のほうが、実際の測器や機器の働きが伝わってくる気がします。
 また、英単語5文字の頭文字を単純につなげると、AMDAS(アムダス)となってあまりピンと来ませんが、運用開始当時の関係者が、主たる機能が(自動)雨量計であることから、アムがアメ(雨)となるように2番目の単語(Meteorological)の2文字目eを(小文字のままで)使うことを思い立ったということです。
 こうして、公式な呼称「アメダス」が生まれ、「雨出す」という語感・音感・語呂合わせによって、(全国津々浦々の)雨の情報(→気象情報)を映し出すシステムであることを、カタカナ4文字で雄弁に物語っています。
 以上、環境課のR生でした。

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