2026.09.09 [ 山好き館長の信州便り ]
成長する有機体。「出版王国信州」よ、永遠に!(FMぜんこうじ「図書ナビ」第42回)
5日間の体験が、人生を変える一歩につながる物語
そこで今回は、お勧め本を、松川村図書館の棟田聖子館長さんに推薦していただきました!
歌代朔(うたしろ さく)さんの、『成長する有機体』あかね書房(2026.7)です。
あかね書房は、長野県上水内郡中条村(現在の長野市)出身の岡本陸人(おかもと むつと)さんが創業した、児童図書を専門とする出版社です。作者の歌代さんは、なんと、図書館司書や保育士として働いた経験をお持ちなんだそうです。

登場人物は、地元の図書館で「職場体験」をすることになった、3人の中学生。実はこの3人、それぞれの生きづらさを抱えています。
一人は、文字を読んだり書いたりすることが上手くできない周(めぐる)。努力が足りないのではなく脳の特性と言われているですが、学校や家庭でも認識されることが難しいそうです。“おふざけキャラ”で茶化すことで乗り切ってきましたが、漠然とした不安を抱えています。
二人目は、小学校から学校に行かず、中学は「タブレット登校」。家からタブレットで授業に参加する形を取っているんですね。会話も文字のチャットだけという、良輝(よしてる)。
三人目は、何も取り柄が無いと自分で思っている普花(ふうか)。実は体の弱い妹がいて、両親は妹に掛かり切り。母親の「普通が一番」という口癖に、密かに傷ついています。
こんな三人の、5日間の体験が、周の視点、普花の視点から語られます。

図書館って、何かを知りたいと思った人の探し物のお手伝いをしたり、誰もが安心して居られることを大切にしています。「本」を相手に仕事をしているようだけど、実は「本」を介して「人」と「人」とを結びつける場所なんですよね。さまざまな体験をしながら、自分を知り、他者を知り、実は大人たちにもいろいろな悩みがあったり、困難をかかえる子どもに寄り添いたいという気持ちを持っていること、サポート制度があることを知って行きます。
たった5日間の職場体験で、突然、人生が劇的に変わるわけじゃない。「知る」ということが「変わる」ということに即座に直結するわけでもない。でも、小さな変化が生きづらさを和らげ、少しずつ他者や自分を受け入れられるようになっていく…。それはもう、人生が変わり始めているってことなのかもしれませんね。
この本のタイトルの『成長する有機体』…「ゆうきたい」は、有機物(生物)のことですが、実は、1931年、インドの図書館学者・ランガナタンが、『図書館学の五法則(The five laws of Library Science.)』で提唱した第五法則「図書館は成長する有機体である(A library is a growing organism.)」に由来しています。なんと、95年前に提唱されたものですが、本質をついているせいか古びた感じがしません。生きているから変わり続ける。変わり続けるからこそ生きていける…図書館も、大切なことを守り続けるために、時代に合わせて変わり続ける。という、図書館にとって、とても大切な理念なんです。
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