2026.08.11 [ 山好き館長の信州便り ]
戦争を知らない世代が、それでも語りつづけるために(FMぜんこうじ「図書ナビ」第40回)
語り直すこと・語り続けること

森:もう1冊は、『父たちのこと 一九四四年のクラスメイト』です。
この本は、大学で英文学を専門に研究している阿部公彦(まさひこ)さんが、太平洋戦争末期に戦争へ行った父親の記録をもとに書き起こした、ノンフィクションです。度重なる作戦で上官や同級生たちを失い、自分だけが生き残ってしまったという自責の念……。残された手記から浮かび上がってきたのは、「私」の知らない父の姿だったといいます。
私が書いた感想は、こんな文章です。
「1944年。主計士官として軍艦に乗った21歳の父・克巳は、過剰なほどに具体的な「戦争」を生きた。祖父や同期生との戦地での邂逅。美談の真相。幾度も遭遇した「生死の分かれ道」。手記を基に、現代の視点から浮き彫りされる「戦争」が、ここにある。」
1944年と言えば、終戦の前年ですね。海軍経理学校を卒業して軍艦に乗った阿部さんの父親・克巳さんは、当時21歳でした。戦場で、克巳さんは自分の父(著者にとってのお祖父さん)。に出会ったり、同級生に出会ったりします。そして、たまたま、自分が船を乗り換えた直後に、もともと乗っていた船が撃沈されたりするなど、「生死の分かれ道」を何度も経験します。戦争では、自己を犠牲にして何かを守ると、それが美談になりますが、実際にはそんなにいい話ではなかった。でも、そんなことを言える状況ではなかった、ということも明かされます。私は阿部公彦さんとだいたい同世代です。「自分自身は戦争を知らない世代だけれども、自分が今、この本を書くことによって、語りつづけることになる」と感じて、ある種の責任感で、この本を書かれたのだろうと想像してます。
私も、旧制松本高等学校の研究をしましたが、旧制松高の卒業生で、学徒出陣して、特攻隊員として亡くなった福元猛寛さんという方がいます。この方は美ヶ原で新種のすみれを発見した自然科学者であり、在学中はアイスホッケー部の主将でした。松本には冬になると完全に凍ってしまう「六助池」という池があって、練習をしていたそうなんですね。私はいつもこの「六助池」の前を通るたびに、「あなたたちの声は私が届けます」「だから安らかに眠ってください」と、心の中で語りかけています。
中川さん:大切なお話をありがとうございます。
夏休み、今は読書感想文という宿題はあるのでしょうか?

森:ちょっと気分を変えて…夏休みの宿題と言えば、読書感想文。ありましたよね。今でも、読書感想文がある学校、多いと思います。
でも、宿題として、むりやり本を読んで、むりやり感想を書かされるのが苦痛。これが原因で本が嫌いになった、という話もよく聞くので、微妙ですよね。
さらに最近では、AIに「何年生の課題の本について、感想を何文字で書いてください」と指示すると、あっという間にそれらしい感想文ができてしまうようなご時世。読書感想文に意味があるの?という疑問もあります。あと、読書感想画、というジャンルもあって、宮沢賢治の『よだかの星』という作品を読んで、絵を描いたことが印象に残っています。醜いとさげすまれた「よだか」が、泣きながら高く高く空に飛んで、お星さまになる話。一生懸命空に向かって羽ばたく姿を描きました。佐藤国男さんによる版画絵本『よだかの星』(子どもの未来社)は、ずっと昔、自分が描いた世界観を思い出して、手元に置いています。中川さんは、読書感想文に、思い出はありますか?
中川:もう、思い出すのも恥ずかしいんですが、昔『老人と海』が課題に出て。一生懸命読んだんですがぜんぜんわからなくて。最後は「あとがき」を読んで何とか書いた思い出があります…
森:ヘミングウェイですね。本を指定されちゃうと辛いですよね…!最近では自分で読みたい本が選べるし、長野県図書館協会では、感想文と感想画と、両方募集しているんですよ。
中川:読書感想画はステキですね!
今月の一冊、お願いします!

森:小学校低学年の読書感想文におススメ、いぶき彰吾・文、田中六大・絵 『発車オーライ! 山の電車「いたずら号」』文研出版(2025年)。以前、黒姫童話館の館長をされていた北沢彰利さんの作品で、寄贈してくださったんです。全国学校図書館協議会の選定図書にも選ばれています。
主人公は、小学2年生の男の子、トオル。山のひいおばあちゃんの家から、たった一人で、お母さんが待つ町に帰ることになりました。ところが、トオルが乗った電車は、キツネや天狗が出てくるいたずら電車。いろんなトラブルが続出します。トオルは無事に家に帰れるのか!と、ハラハラ・ドキドキの展開なんですが… 悪役かと思った登場人物が、実は、という種明かしもあって、最後は笑顔で終わります。
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