駒ヶ根ソースかつ丼会
会長 新井 孝治郎さん
国民食ともいえるほど日本中で愛され、庶民の味として親しまれているカツ丼。
卵とじが一般的ですが、駒ヶ根市では揚げたての厚切りトンカツに甘辛ソースを絡め、千切りキャベツを敷いた「ソースかつ丼」がおなじみです。この味わいを求め、多くの観光客がこぞって訪れるご当地グルメの定番でもあります。
ソースがかかったカツ丼が市内で初めて提供されたのは、昭和初期。食通だったカフェ「喜楽」の主人が、当時盛んになりはじめたカレーやカツレット、オムレツなどの洋食を見て、煮カツをヒントに考えたとの逸話が残っています。
そのカツ丼が評判となり、さらに当時、伊那谷には日本初のソースを造った「KAGOME」の工場があって、この地域でソースが身近な存在だったことから、次第にソースかつ丼が家庭料理としても普及したと言われています。
しかし、県内外にその存在が知られるようになるまでには、陰ながらの努力がありました。
ふたつのアルプスに囲まれた自然豊かな駒ヶ根市でも、平成に入るとバブル経済が崩壊して地域間競争が激化。地元が育んできた地域資源でまちおこしができないかと、商工会議所では地方創生の専門家を市外から招いて検討会を開きました。
そんな折、昼食で提供された「ソースかつ丼」を見た専門家は、今まで食べたことがない意外な見た目の料理に驚き、「これはこの地域の活性化の起爆剤となりうる素材だ!」と確信します。
全国各地を巡っていた専門家でさえも珍しいと感じたソースかつ丼。地元の人にとってはあまりにも当たり前の食事だったことから、当初はなかなか飲食店の賛同が得られませんでしたが、専門家と商工会議所の丁寧な説明などにより、少しずつその独自性や可能性に対する理解が浸透しました。
こうして1993年、ソースかつ丼を提供する飲食店が参加して「駒ヶ根ソースかつ丼会」が発足。独自の食文化を切り口に、まちの魅力を発信する取組みがスタートしたのです。
特に尽力したのが、味の決め手となる旨味ソースの基本となるレシピ作りです。地元味噌蔵に委託醸造して市販品を開発。さらに、品質の統一を図るべく「肉は豚ロースが基本で120g以上」「キャベツ以外の野菜は載せない」といった9カ条を定めました。
これにより、山梨県甲府市や群馬県桐生市、福島県会津若松市、福井県などに伝わるソースカツ丼とは一線を画すものになったのです。
以来、ご当地グルメの祭典「B-1グランプリ」で入賞するなど、全国的な知名度も向上。
15周年には市販のソースに駒ヶ根市内で製造されている伊那醤油の本醸造醤油を使用し、よりおいしくリニューアルしました。
25周年には全国のソースかつ丼を集めたフェスを企画するなど、さまざまな活動を展開しています。
ほかに、地元マラソン大会の参加者への割引券の配布や、ふるさと納税の返礼品としての活用、地元受験生に向け「かつ丼を食べて、試験に勝つ」との意味を込めた駒ヶ根ソースかつ丼会に所属する飲食店のかつ丼の割引券の配布など、地域に根ざした取組みも実施。
2015年には持ち帰り弁当専門チェーン店「ほっともっと」での期間限定のメニュー化により、全国展開も果たしました。
現在、34店舗が加盟する駒ケ根ソースかつ丼会5代目会長を務めるのが、ラーメン店「えんぎ屋」など2店舗を営む新井孝治郎さんです。
「えんぎ屋」でも、餃子や唐揚げ、チャーシュー丼などのセットメニューがある中で、ラーメンとソースかつ丼のセットが一番人気。
新井さんが作るソースは会で定めた旨味ソースの味を基準に、新井さんの店ではすりおろしりんごを加えるのがポイントです。カツは180~200gのボリュームで提供しています。
「ソースかつ丼は、和・洋・中を問わず提供できるのが魅力で、駒ヶ根市内の店をいくつもはしごする観光客の姿も見られます。一方で、会ではお客様の期待を裏切らない調理に努めてきました。先輩たちが築いてきた歴史の重みも大切に、これからも地域の食を通じた活性化に貢献していきたいですね」
こう話す新井さん。来年はいよいよ駒ヶ根ソースかつ丼会発足30周年を迎え、まだまだ発展していく会の展開に、今後も要注目です!
(有)大喜 えんぎ屋
住所:上伊那郡宮田村4830-1
電話:0265-96-0403
※この記事は2022年10月時点の情報です。取扱商品等は変更になっている場合がございますので、ご了承ください
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