夏休み企画特集!(FMぜんこうじ「図書ナビ」第5回)

今月のおススメ本のご紹介をお願いします

森:今月は、夏川草介さんの『始まりの木』をご紹介したいと思います。
夏川草介さんといえば、『神様のカルテ』という作品が、映画にもなったのでご存じの方も多いかもしれません。
夏川さんは現役のお医者さんで『神様のカルテ』は病院を舞台にした作品ですが、今回の『始まりの木』は、民俗学がテーマ(みんぞくの「俗」は、人偏に谷のほうです)。民俗学といえば、柳田国男さんの『遠野物語』が有名ですね。

『始まりの木』表紙のデザインも素敵です

『始まりの木』表紙のデザインも素敵です

始まりの木』の主な登場人物は、二人。一人は、松葉杖をつきながら、全国各地をフィールドワークで巡る、大学の准教授(古屋神寺郎)。もう一人は、どんな研究をしたいのか模索中の、大学院生(藤崎千佳)です。行先は、岩手や京都、高知、東京とさまざまで、長野県にもやってきます。長野市内の大学の教育学部も出てきますし、松本市~伊那谷まで足を延ばします。伊那谷にある巨木、樹齢数百年の大きな木が、「民俗学」を志そうとした主人公にとっての「始まりの木」でした。

著者の夏川さん曰く「少しばかり不思議な話を書きました。木と森と、空と大地と、ヒトの心の物語です」とのことです。
物語の中に、古屋准教授のこんな言葉が出てきます。「この世界には理屈の通らない不思議な出来事がたくさんある。科学や論理では捉えきれない物事が確かに存在する。そういった事柄を、奇跡という人もいれば運命と呼ぶ人もいる。超常現象という言葉で説明するものもあれば、『神』と名付ける者もある。名前はなんでもよい。なんでもよいが、目に見えること、理屈の通ることだけが真実というわけではないんだ」

現代の私たちは、科学技術の力でとても便利で快適な生活を手に入れています。
でも、どこか、大切なことを置き忘れてきたような。地球温暖化も含めて「世の中このままじゃ、限界がきちゃうのでは?」という不安を感じることもあるのではないでしょうか。

昔から人々が営んできたこと。そこに確かにあった「目には見えないけれども大切なこと」に光をあて、これからの生きる道を考える、そういう学問が「民俗学」なんだ。未来につながる学問なんだと、大学院生の藤崎千佳は気付きます。こういう考え方は、もしかしたら「SDGs」にもつながる要素があるかもしれませんね。

最後に、リスナーの皆さまへのメッセージをお願いします

今年の夏は、本当に暑いですね。

長野県では、「涼しさを分け合おう、信州クールシェアスポット」というキャンペーンをしていて、図書館もクールスポットになっています。涼んでいただきながら、本を通じた新しい出会いがあったら嬉しいなと思っています。

中川さん:ありがとうございました。さきほどの『始まりの木』のお話や、今のお話も、「SDGs」につながりそうですね。次回は…森さんは夏休みということで「図書ナビ」コーナーはお休みです。また10月に、お願いします。

森:ありがとうございました!

 

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