今、素材や製法にこだわって少量生産される個性豊かな“クラフトジン”が世界的なブームです。
ジュニパーベリー(ねずの実)を使用する等の共通認識はあるものの明確な定義はなく、長野県でも独自のジンが誕生。地域に根ざした酒蔵も製造に乗り出しています。
黒澤酒造株式会社
杜氏 黒澤 洋平さん
北八ヶ岳の麓、佐久穂町の八千穂高原に広がる50万本ものシラカバ樹林。「日本一の美しさ」とも評される、その自然の恵みを生かした酒造りに取り組んでいるのが千曲川最上流に位置し、町唯一の酒蔵である「黒澤酒造株式会社」です。
町の特産品をつくろうとシラカバ樹液を採取し、2000年よりボトリングして地域で販売するというユニークな取り組みも行ってきた同酒造。かねてより焼酎づくりにも取り組んできましたが、2009年、杜氏になったばかりの黒澤洋平さんが、兄で現在代表を務める孝夫さんとともに、より特徴のある焼酎をつくろうと樽貯蔵を開始しました。
その後、樽の香りが漂う焼酎に、アルコールの甘みを引き出すシラカバ樹液を加えたお酒を商品化。酒税法上、焼酎の分類とは異なる新ジャンルの商品のため、販売に向け、2019年にスピリッツ製造の免許を取得しました。
そして、2020年、想像もしていなかったコロナ禍に見舞われます。厳しい状況下でも、これまでの経験と免許を生かして何か新しい挑戦ができないかと考えたのが、ボタニカルに町の特産品を使ったクラフトジンの製造でした。
「佐久穂町の酒蔵として町にあるものを活用し、自然豊かな環境で酒造りをしていることを表現できる商品をつくりたい。そのためにも、ほかの地域からも取り寄せられる素材ではなく、地のものでつくりたいという思いがありました」
こう話す洋平さん。そこで、ジュニパーベリー以外は町内産のボタニカルを使い、シラカバ樹液はもちろんのこと、森の香りを表現しようと、シラカバの葉も加えて製造に取り組みました。
さらに、地域にある果実で香りを表現したい思いから、自社でつくる梅酒やリキュールで使う梅や桑の実、ブルーベリー、プルーンなども活用。初夏の森で採れる香り高い山椒の葉も使用しました。
こうして誕生したのが「黒澤 白樺ジン」です。ボタニカルごとに分けて蒸留し、それぞれ抽出したものをブレンド。蒸留の仕方だけでなくブレンドのバランスや配合によっても風味が変わるため、難しさとともに蒸留酒づくりの奥深さや面白さも感じたと話す洋平さん。
「シラカバの葉っぱと樹液を使ったジンはそれだけでも唯一無二ですが、ほかにも地のものを素材に加えたことで、私たちらしい面白いジンができたと感じています。『黒澤 白樺ジン』は『東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)2022』の洋酒部門で金賞もいただき、やり方は間違っていなかったと自信にもなりました」
さらに、長野県らしさを感じるジンもつくりたいとの思いから「黒澤 白樺ジン」をベースに、焙煎した長野県産の蕎麦の実を使った「& SOBA GIN(ソバジン)」も開発。蕎麦に合う素材として、ミョウガや杉の葉なども加えています。
土地特有の素材を使って既存の枠にとらわれないユニークな酒造りで地域の魅力も発信しています。
黒澤酒造株式会社
住所:長野県南佐久郡佐久穂町穂積1400
電話:0267-88-2002
https://kurosawa.biz/
※この記事は2022年8月時点の情報です。取扱商品等は変更になっている場合がございますので、ご了承ください
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