2026.06.14 [ 山好き館長の信州便り ]
梅雨空に父母を想う:本を片手に一緒に空を見上げたい(FMぜんこうじ「図書ナビ」第39回)
みなさま、こんにちは。県立長野図書館の森です。FMぜんこうじの「ひるどきもんぷらワイド」、 2026年6月9日(火)に放送された「図書ナビ」コーナー、第39回目の内容をご報告します。
中川さん:梅雨がやってきましたね。でも、雨に濡れた緑もまた美しいですよね。

6月・・・梅雨がやってきましたね
森:そうですね。雨といえば、思い出すのは、カーペンターズの名曲、『雨の日と月曜日は』
でも、中川さんがおっしゃるとおり、雨に濡れた緑はしっとりして、瑞々しくて、私も好きです。特にアジサイは、雨が降る中で見る方が、より美しいですよね。山野草に「サンカヨウ(山荷葉)」(ウェザーニュース:初夏から梅雨に咲く“透明の花”「サンカヨウ」)という白い花があるのですが、雨に濡れると花びらがガラスのように透き通ります。雨ならではの美しい風景は、身近にたくさんありそうですね。
中川さん:サンカヨウ…まだ見たことがないですが、この辺りでも見られますか?
森:この辺りだと、以前、戸隠山に登った時に沢山みかけました。長野県公式観光サイトによれば、白馬村の「栂池自然園」や、「野沢温泉スキー場」でも見られるようです。
日本高等教育学会に参加してきました

森:先日、日本高等教育学会で、「学びの生活世界とキャンパスの再定義ー生活学習空間・公共空間・地域社会ー」というテーマのシンポジウムが香川大学で開催されました。
コロナ禍で、オンラインでの講義が普通にできるようになって、「学校に通わなくても学ぶことは可能」という認識が、幅広く共有されました。私が社会人大学院を修了できたのも、オンラインの講義が受けられたから。おかげで、ハードルが低くなったのは確かです。
一方で、学校や大学のキャンパスには、「友人と出会い、時間を過ごす」ことにも意味があります。授業を受ける場である以上に、日常生活のリズムや人間関係を形成するための「場」としての役割がとても重要だ、改めて認識されるようになってきました。
キャンパスは「生活学習空間」として、大学の外に広がる公共図書館やまちなかの学習拠点、地域のコミュニティ空間など、滞在・交流し、さまざまな活動が自然に生まれる場とつながりながら、キャンパスの意味そのものを再定義していく必要があるのではないか…。そこで、公共図書館としての事例を紹介してほしいと、主催者の小方直幸先生に、お声を掛けていただいたんです。図書館も、「静かに読書をする空間」から、「体験や交流を通じて共に学び、何か新しい価値を共に創り出す空間」へと、役割が広がってきています。その具体例として、図書ナビでもご紹介してきた、近場で見つける遊びと文化の宝探し「わかさとクエスト」や、モノづくりをする人たちの作品を展示する交流会「モノコトフェス」などについて、お話してきました。
「高等教育学会」は、主に大学の関係者が研究や教育について話す場なので、公共図書館の事例が興味を持ってもらえるのかな?と心配しましたが、「わかさとクエスト」も「モノコトフェス」にも、大学の先生や学生さんたちが参画されていますし、いろいろな世代の人たちと交流したり、地域で活躍する場があるのは良いことだと思います。どんな人にも開かれた「場」があることで、身体も心も、社会的にも健康で幸せに生きられる「ウェルビーイング」が実現したり、温故知新から新しい価値「イノベーション」を生み出せるのではないか。そういう空間・場づくりを、あんまり難しく考えず、それぞれの身近なところで、持ち寄って創り出せたらいいな…、という共感が得られたように思います。とても貴重な経験をさせていただいて、有難かったです。(発表資料はコチラ)
母の日、父の日に寄せて:『空の名前』と『宙ノ名前』

森:私の母の実家が香川県の高松市にあるので、母の家に泊らせてもらいました。私の両親は、それぞれ膨大な本を遺しているので、その本をどうするかは、兄たちから私に託されているんです。
それで、今回、母の本棚を眺めていて、とても懐かしい本をみつけました。高橋健司『空の名前』光琳出版社(1992年)です。当時、ベストセラーになりました。
空を見上げた時に、いろいろな形の雲を見つけて、「あれは何ていう名前の雲なんだろう」と思うこと、ありますよね。夏だったら入道雲。秋には鱗雲。空にわく雲から季節を感じることも多いです。梅雨時ということで、気になる雨にも、たくさんの名前がありますね。『空の名前』は、こういった、空や季節にまつわるさまざまな言葉の辞典です。写真もふんだんにあって、パラパラと眺めるだけでも、楽しいです。『空の名前』によると、「梅雨」という言葉は、江戸時代の中頃、貝原益軒(かいばら えきけん)による『日本歳時記』に出てきたようです。早速、国立国会図書館デジタルコレクションで、本文を確認してみると…。出てきました。「此月(このつき)淫雨(いんう)ふる。これを梅雨(つゆ)と名づく。又黴雨(ばいう)ともかけり。」「梅に雨」と書いて「つゆ」と読ませますが、「ばいう」とも読みますよね。梅の実の季節だから「梅」の字を当てるのは分かりますが、「ばい」と読ませるのは「黴菌」の「ばい」の字を当てることもあったからのようです(苦笑)。
中川さん:本当に、空の名前や雲の名前などが沢山あって、それぞれに美しい写真があって、見応えがありますね!

森:母の本棚で『空の名前』を見つけて、懐かしいなぁと思ってパラパラめくっていたら、なんと、私が両親に書いた手紙が挟んでありました。日付は、1999年5月10日。27年前です。ちょっとかいつまんで読んでみます…
「お父様、お母様、野の花が咲き匂う、美しい季節となりました。お元気ですか?…私は、念願だった新しい組織の、新しい掛に配属され、張り切って仕事をしています。今年は、母の日と父の日に因み、本をお送りしました。どうぞお二人で楽しんでください。」
ちょっと恥ずかしいですが、ちょうど30歳になったばかり。仕事にやりがいを感じている様子が伝わってきます。
実は『空の名前』は、シリーズがもう1冊あります。宇宙の「宙」と書いてソラと読ませる、林完次『宙ノ名前』光琳出版社(1995年)という本で、夜空の月や、季節ごとの星の名前がでてきます。こちらの、いわば夜の『宙ノ名前』は、私の本棚に置いてありました。たぶん、もともと2冊とも自分自身が持っていて、そのうちの1冊を、母の日と父の日を兼ねて両親に送ったんですね。
両親に、一緒に空を見上げるように仲良しでいてほしい。そして、遠く離れた娘のことも、思い出してほしい。そんな気持ちで、この手紙を綴ったのではないかな…と思います。
この時、確か、母はすごく喜んでくれたのですが、父がどんな反応を示したか、あまり印象に残っていません。男親って、なかなかストレートには思いを伝えてくれなかったりしますよね。
今回、手紙と一緒に大切に持っていてくれていたことを知って、じわっときました。「本」というのは、時と空間を超えて、人と人の想いをつないでくれるんだな、と。改めて大切にしたいなと思いました。
(光琳出版社は、1999年に事業を停止されたようですが、質の高い写真集などに定評があったそうです。古書店さんで入手したり、図書館でも持っているところが多いと思います。)
二十四節気、七十二候

森:日本の歳時記や、二十四節気(にじゅうしせっき)、七十二候(しちじゅうにこう)について書かれた本は、沢山あります。
今日持ってきたのは、『日本の七十二候を楽しむー旧暦のある暮らしー』東邦出版(2012年)。詩人の白井明大(あけひろ)さんの文章、有賀一広さんの絵が素敵です(KADOKAWAから増補新装版が出ている)。
この本によると、二十四節気では、今は「芒種」。稲や麦など、穂の出る植物の種を蒔くころです。さらに細かく七十二候で見ると、「蟷螂生ず(かまきりしょうず)」かまきりが生まれる頃。その次は「腐草蛍と為る(ふそう、ほたるとなる)」蛍が飛び交う頃。昔の人は、腐った草が蛍に生まれ変わると信じたそうです。さらにその次は「梅子黄なり(うめのみ、きなり)」梅の実が黄色く色づく頃…と続きます。自分の誕生日の頃を探してみるのも、風流ですね。私は、3月6日の生れで、二十四節気は「啓蟄」。七十二候では「蟄虫戸を啓く(すごもりのむし、とをひらく)」。虫やさまざまな生き物たちが、目覚める季節です。
雨の日、物語世界にどっぷりと浸ってみたい
中川さん:さて、今月の一冊は?雨の日、本を読む愉しみがありますね。

森:今回は、梨木香歩さんの『家守奇譚(やもりきたん)』新潮文庫(2006年)を持ってきました。「やもり」は、家の守りと書きます。
今日は、梅雨時の話題から季節ならではの自然の風物についてお話してきましたが、この物語も、主人公の住む家の庭木や草花が季節ごとに出てきます。そして、物語全体に、雨や水の気配がします。
夕方に雨風が強まって、雨戸を立てようかと迷っていたら、掛軸の中から、何やらキイキイと船を漕ぐ音がして…若くして亡くなった友人が、主人公を訪ねて来ます。
「逝ってしまったのではなかったのか」「なに、雨に紛れて漕いできたのだ」…このシーンがとても印象的で。他にも、河童やタヌキが普通に出てきます。
物語は、謎が残されたまま終わるのですが、10年以上たって続編の『冬虫夏草(とうちゅうかそう)』新潮文庫(2017年)が出され、残された謎が解き明かされます。
上田秋成(うえだあきなり)の『雨月物語』もそうですが、雨って、ふっと何かの気配を感じそうな。ちょっと怖いような、不思議な何かが訪れてきそうな、雰囲気がありますよね。雨の日に、こうした物語に、どっぷり浸かってみるのも一興かもしれません。
中川さん:リスナーの皆さまへのメッセージ、お願いします!
図書館で雨の日に読みたい本を探してみませんか?

森:雨でおでかけが出来ないような時、近くの図書館や本屋さんで、いろいろな本を探してみていただければと思います。
雨や天気の仕組みの本や、梅雨時を快適に過ごすハウツーものの本、雨にちなんだ物語など、特集棚を作っているところもあると思いますよ。
先日、市立須坂図書館で見つけた「梅雨の季節に読みたい本」のコーナーの写真を貼っておきます^^
梅雨時、暑かったり寒かったりするので、どうぞお身体を大切に。
今月も、ありがとうございました!
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