2026.05.12 [ 山好き館長の信州便り ]
特別だけれど普通の一日:「平和」を感じるひと時(FMぜんこうじ「図書ナビ」第38回)
陽射しが強く、暑くなりましたね。
みなさま、こんにちは。県立長野図書館の森です。FMぜんこうじの「ひるどきもんぷらワイド」、 2026年5月12日(火)に放送された「図書ナビ」コーナー、第38回目の内容をご報告します。
陽射しが強く、暑くなりました。伊那のボタン寺と呼ばれる
GWは、いかがお過ごしでしたか?
森:GWは、図書館としてはかき入れ時なのでお休みせずに開館していましたが、振替休日などもいただきながら、ガーデニングを楽しみました。
去年までは、社会人大学院などがあって休日もぜんぜん余裕がなかったのですが、今は自由時間が多いので、晴れたら庭しごと、雨が降ったら読書と、晴耕雨読を地で行っています。
中川さん:晴耕雨読、素敵ですね! ガーデニング、例えばどんなお花を?
森:夏の草花、例えばロベリアやサフィニア、マリーゴールドなど。バラも植えました。
GWは、楽しいイベントもありましたね!
森:5月2日(土)は、図書館の目の前に広がる、若里公園の周辺の関係者による協働で、「わかさとクエスト 2026」が開催されました。
なかなか遠くに連れて行ってもらうのが難しい、というお子さんも含めて、「近場で見つける遊びと文化の宝探し」というコンセプトです。
昨年4月、ホクト文化ホールの町田弘行さんが「図書ナビ」に出演してくださいましたが、今年も町田さんを中心に、子どもの体験を応援するこどものモールや、長野シルバー人材センター、信州大学工学部、テレビ信州に加えて、今年からは発酵バレーNAGANOや、長野県東口商店街協同組合、荒木地区からも、出展・協力をいただきました。昨年以上に出展者が増え、参加者も2,500人以上とたくさんの人たちに楽しんでいただけました。
図書館の「信州・学び創造ラボ」 に、スタンプラリーのゴールが設置されたんですが、そこに景品をもらいに来た人たちが300人近くになったし、普段は入れない書庫内を探検できる「バックヤードツアー」も大盛況でした。中川さんも遊びに来てくださったと伺いましたが、いかがでしたか?
中川さん:大人たちがガンガン踊っていたり、子どもたちが飛び回っていたり。美味しいキッチンカーも来ていたし、盛況でしたね。私もファッションショーのような「わかさとクエストCollection It’s Your Go」で、ウォークしてきました!感心したのは、陰で支えている学生さんたち。歩くルートを教えてもらって、「前に出たら、好きなように好きなだけ踊ってください」などと、細やかに教えていただきました。もしかしたら将来、こういうお仕事に就く子もいるかもしれないと思いました。
森:私も、実は「お花屋さんのお仕事を体験しよう」というのに参加して、お花のアレンジメントを作って図書館にプレゼントしました。こういう体験は、将来の夢につながるかもしれないワクワク感がありますね。
図書館3階で繰り広げられた「お芝居」の世界
中川さん:さて今日の話題は?
森:このまま、「わかさとクエスト」の流れで…。 図書館の3階に、普段は松本で活動している「シアターランポン」という劇団が来てくれました。演目は、「カメレオンの陽気なキャラバン」という、いくつかの短いお話のオムニバス形式のお芝居です。「カメレオン」というとおり、一人一人の役者さんがいくつもの登場人物に扮していましたが、その中に『郵便屋さんの話』がありました。
とある郵便局に、宛名も差出人もない、お手紙が届きました。実は、その郵便局には小人たちが住んでいて、いろいろなお仕事をしています。で、小人たちが言うには、この手紙は、ある男性が愛する女性にプロポーズする内容なんですね。(小人さんといえば、夜のうちにお仕事をしてくれるありがたい存在、みたいな願望ありますよね)
で、その手紙がプロポーズだと聞いた郵便屋さんは、「ぜひとも届けてあげなくては!」と、奮起します。そして、1年と1日の間、届け先を探し続けるのですが…。ネタバレになるのでここまで(笑)。本当に幸せで清々しい気持ちになるお芝居でした。
パソコンやスマホが普及して、電子メールやSNSで即座に情報が伝わる昨今、このお芝居では、1年と1日という長い時間をかけて届いたお手紙が、もらった人はもちろん、書いた人も、届けた人も、周りの人をも幸せにしてくれるんです。スピードばかりが求められる忙しい世の中で、ちょっと立ち止まって考えたくなるお話ですよね。
中川さん:本当に。手書きのお手紙って、いいですよね!
森:実は、今日誕生日を迎える友人がいるんですが、プレゼントには手書きのお手紙を添えようと思っています。
「わかさとクエスト」の打ち上げに参加されていた役者の細川貴司さんから、「実はこの『郵便屋さんの話』は、カレル・チャペック原作の童話なんですよ」と教えていただきました。
カレル・チャペックはチェコの作家さんで、岩波少年文庫に『長い長いお医者さんの話』(1990年)という童話の短編集があります。『郵便屋さんの話』もここに入っていました。私もこの本は持っているので、読んだはずだったんですが、すっかり忘れていて。家に帰って読み返してみたら、お芝居は原作にとても忠実で、しかもお芝居でしか醸し出せない独特の面白みがあって、奥深いなぁと思いました。普段、あまりお芝居を見に行くことがないのですが、お芝居を見て原作を読む。こういう味わい方も良いなと思いました。
カレル・チャペックといえば、なんと「ロボット」という言葉を生み出した人でもあります。1920年に発表した戯曲『R.U.R.(ロッサム万能ロボット会社)』の中で、人造人間を「ロボット」と称する造語を、初めて使ったそうなんです。(「ロボット三原則」は、アイザック・アシモフですね)
「あるある」な表現に、「我が意を得たり!」
森:あとは、熱狂的なガーデナーをユーモアたっぷりに描いた『園芸家12か月』中公文庫新装版(2020年)も有名です。私もガーデニング好きとして、ニヤニヤしながら読みました。
中川さん:「あるある」、ありました?
森:はい! 例えば、5月には「恵みの雨」という章があります。今年のゴールデンウィークは、雨の日と晴れの日が交互にやってきましたね。「わかさとクエスト」の前日は大雨で、ヤキモキしました。この季節は田植えもあるし、雨は必要です。でも、「適度に」降ってくれたら良いのですが、なかなかそうはならない。そのヤキモキぶりが面白く描かれています(笑)
私自身の失敗談として、咲き終わった花ガラを摘んでいる時に、うっかり蕾まで切ってしまったり、せっかく地面に出てきた芽を踏んづけてしまったりすることがありますが、4月の章には、こんな文章が出てきます。「足の下でポキッという音がすると、おそろしさとはずかしさでからだじゅうが寒くなる。この瞬間には誰でも、自分がまるで、そのひづめで踏んだ場所には草が生えなくなる、なにかの怪物のような気がする。」…こんな感じで、ものすごく大げさに表現しているのが可笑しいんです。
自分が好きなことをテーマにしたエッセイは、「自分は違う!こうじゃない」と反発することもありますが、「あるある」な表現に出くわすと、「我が意を得たり!」と楽しくなりますね。
5月の風のような爽やかで優しい本
中川さん:「今月の一冊」は、「5月の風のような爽やかで優しい本」をリクエストさせていただきました!(笑)
森:いろいろ考えてみたんですが、GW中に庭しごと、(というか草取り)をしている時に、ふと思い出した詩がありました。星野富弘さんの、タンポポの詩です。
「いつだったか きみたちが 空をとんでゆくのを見たよ 風に吹かれて ただひとつのものを持って 旅する姿が うれしくてならなかったよ」
タンポポは、黄色い花が終わると、すうっと茎を伸ばして、白い綿毛を作りますね。綿毛には、一つずつ、タネがくっついています。今はちょうど、綿毛の季節。
「風に吹かれて ただひとつのものを持って 旅する」…そんな綿毛たちへのエール、優しい眼差し、爽やかな情景を感じます。詩の後半を、中川さん、読んでみていただけますか?
中川さん:喜んで、読ませていただきます。
「人間だって どうしても 必要なものは ただひとつ 私も 余分なものを 捨てれば 空がとべるような 気がしたよ」
森:ありがとうございます! 星野富弘さんは、もとは体育の先生で、怪我で手足の自由を失いますが、口に筆をくわえて、草花の絵と詩を沢山生み出した方でした。星野さんの絵と詩は、ほんとうに優しくて…、どんなに困難な状況にあっても、恨みがましくなく、どこか爽やかで、しなやかで、本当の強さのようなものを感じさせてくれます。
このタンポポの詩は、『あの時から空がかわった』いのちのことば社(2016年)という詩集に収められています。
他にも、こんな詩があります。「たち止って いいんだよ 振り返って いいんだよ そこに美しいものを見たのなら すわりこんで ずうっと見ていて いいんだよ」
詩に添えられた絵は、「カキドウシ」という、道端によく生えている、まぁ、言ってみれば、「雑草扱い」されそうな花です。でも、よくよく見ると葉っぱも花も、可愛いんです。
何となく、道端に座り込んで、ちょっと見、何てことない植物や昆虫に、夢中になっちゃう子どもの姿を思い浮かべます。もしかしたら、大人でもそういうコトあるかもしれません…。
どんな小さなことでも、その人なりに「美しい」と感じる、人の感性を信じ、肯定し、見守ってくれているのが伝わってくる詩です。
図書館からのお知らせ:5月16日から月末(土)から蔵書整理休館
中川さん:図書館からのお知らせ、ありますか?
森:実は、今週の土曜日、5月16日から月末の31日(日曜日)まで、蔵書整理のため、県立図書館が休館になります。年に一度の棚卸で、行方不明になっている本を探したり、皆さんが図書館をより使っていただきやすくするための期間です。申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
そうそう。こういう図書館が休館になってしまうときにも、電子書籍(「デジとしょ信州」、「KinoDen」)だったら365日24時間、いつでも本が借りていただけます。5月16日(土)から休館なので、15日(金)までに、ぜひ、利用登録にお越しください!
平和を感じるひと時:ウクライナのトロンボーン奏者、パブロさんの言葉
中川さん:リスナーの皆さまへのメッセージ、お願いします。
森:「わかさとクエスト」では、ウクライナから来たトロンボーン奏者のパブロさんが、公園で演奏してくださいました。帰り際に、こんなことをおっしゃったそうです。
「平和を実感できる、良いコンサートだった」と。
5月の爽やかなお天気の下、たくさんの子どもたち、親子連れ、おじいちゃんおばあちゃん、若い人、いろいろな人が楽しいひと時を過ごしたあの日。演奏会を終えて、「平和」を実感されたという、ウクライナのパブロさんの言葉をしっかりと受け止めて、大切にしていきたいと思いました。世界のいろいろなことに想いを馳せながら、静かに本のページをめくる。そんなひと時も、図書館で味わっていただけたらと思います。
中川さん:「平和」という言葉、大切ですね。実は、夫と二人で行ったのですが、夫は昔、図書館に勉強で通っていたことがあるそうなんです。今回久しぶりに行って、「まるでカフェのよう」と、さま変わりした様子に驚いていました。「わかさとクエスト」は、特別に楽しいイベントでしたが、普通の日でもあり、日常でもある。それこそが、「平和」なのかもしれないと思いました。今日もありがとうございました!
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