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「プラチナ社会」をつくるのは?(FMぜんこうじ「図書ナビ」第8回)

これからは、学校に行きづらい子どもたちや、免許証の返納とか、介護や育児で外出がしづらい方々、紙の本を読むのが難しい方々などにとっても、読書のチャンスを広げていけたら良いなと思っています。

中川さん:私は紙の本の匂いや手触りも好きですが、『ハンチバック』(市川沙央著、第169回芥川賞受賞作)を読んで、紙の本が重くて持てないということもあるんだと気が付きました。「デジとしょ信州」はいろいろな人に本が届けられる仕組みなんですね。どうすれば使えますか?

森:まずは、お住いの自治体の図書館や、公民館の図書室に、お問い合わせしてみてください(受付窓口はコチラ)。もちろん、県立長野図書館でも受け付けています。

今月の一冊はC.W.ニコルさんの伝記

中川さん:今日は、「プラチナ社会」が話題になりましたが、関連しておススメの本はありますか?

ニコルさんの伝記『森の赤鬼』

ニコルさんの伝記『森の赤鬼』

森:今回は、『森の赤鬼:C.W.ニコルの軌跡』をご紹介します。信濃町にある黒姫童話館の前館長さんで、教育者・児童文学作家の北沢彰利さんが、信濃毎日新聞の連載を本にまとめたもので、今年の5月に出版されました。
ニコルさんのこと、ご存じの方も多いと思うのですが、中川さんはどんなイメージをお持ちですか?

中川さん:森林の再生を通して環境を守る活動をされて、自然の中で遊ぶ楽しさや、難しいことを易しく教えてくれた人、というイメージがありますね。

森:実は私は、ニコルさんのことは「環境活動家」という以外に、あまりよく知らなかったんです。ところが先日、朝日村図書館の100周年を記念する講演会があって、北沢さんがニコルさんのお話をしてくださいました。
ニコルさんは、イギリスのウェールズというところの生まれで、17歳の時、初めて北極地域の探検調査に参加したそうなんです。20回以上北極に行き、狩猟で生きるイヌイットの人々から「人は殺した生き物の魂を一生背負っていく」という生き方を学んだそうです。
アフリカのエチオピアで国立公園を作ろうとしたときには、密猟者と闘ったり…。「悪いことは悪い」と厳しく取り締まるけれども、貧しさ故に密猟などに手を染めてしまう、そんな人々の尊厳まで否定することはしない。小さな悪事を暴くより、もっと大きな、政治や社会構造の根本の問題を解決していくという信念で、奔走した人だったんだということを知りました。
故郷のウェールズで、森を再生させる取り組みの話を聞いて、自分も頑張ろうと思ったそうです。

中川さん:厳しさと優しさの両方を持っていて、根底にあるのは生きるものに対する温かい気持ちだったのかもしれませんね。本を読んで、特に印象に残ったことはありますか?

森:ニコルさんの最晩年に、コロナ禍が起こりました。「人間もウイルスも、地球上の同じ生物だ。封じ込めなどできはしない。バランスが崩れているのだ。共生するしかない」と、新聞のコラムで語っておられたそうです。人類にとって「敵」としか思えない存在とも「共生」の道を探る。そういう覚悟を持った人だったんだな、と印象に残りました。

ニコルさんはすごい人だな、と思います。だけれども「プラチナ社会」は、誰かすごい人が実現してくれるということではなくて。私たちそれぞれが、何か大切なことに気づき、勇気をもって動き出すこと。その小さな積み重ねが、変化を起こしていくのではないかなぁと、思います。ニコルさんが、そのことに気づかせてくれた気がします。

中川さん:勇気。大切ですね。「これちょっとおかしいんじゃない?」「もっとこうしたらいいよ」って、自由に話せること、大切ですよね。今日は、本を媒介にしてお話がたくさんできて良かったです。リスナーの方へのメッセージをお願いします。

森:もうほとんど冬、というくらいに寒くなってきました。図書館は、心や身体が温かくなったり、好奇心がくすぐられるような、さまざまな本や情報を揃えて、皆さまをお待ちしています。

中川さん:これから夜が長くなって、読書に良い季節ですね。皆さまぜひ、本を読んでみませんか?そして、「デジとしょ信州」も…。


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