2023.07.12 [ 図書館のお仕事ナツとしょ山好き館長の信州便り ]
みんなが幸せに生きること(FMぜんこうじ「図書ナビ」第4回)
例えば、今このスタジオに花が飾ってあります。青い花は爽やかな感じ、向日葵は明るい感じ。でも、見る人によって感じ方は違うかもしれない。この、花瓶の花を通して、お互いに話をしている感じです。(「なるほど」、とうなずいてくれました)
森:白鳥さんにとって、アートの鑑賞は、作品に関する「正しい知識や解説」ではなくて、今目の前にあるアートを「媒介」にして、どんな会話が紡ぎ出されるのか、話されるプロセスがおもしろいんだそうです。私はこれまで、アートとか絵画というのは、見て、解釈する「対象」だと考えていました。だから、例えば、見えないのであれば、手で触って感触を確かめる、というような手法なら、ありそうだなと思っていました。でも、白鳥さんの鑑賞の仕方は、アートや絵画が、「対象」というよりも、「触媒」のようなものなんですね。
中川さん:「触媒」・・・ですか?
森:はい。同じ一つのものを見ていても、感じ方は人それぞれですよね。それを声に出して、言葉のキャッチボールをすることで初めて、「違い」とか「共通点」とか、それぞれの人の考え方や体験してきたことが見えてくる。それを引き出すキッカケとなっているのが、「触媒」としてのアートなんだ、っていう捉え方です。自分一人で黙って鑑賞している時には出てこなかった感情や記憶が、人と話すことによって、気が付いたりできる。白鳥さんは、そういう対話に参加しながら、アートを鑑賞しているんだ、ということが書いてありました。
ところで、美術館とか博物館って、ふつうは静かですよね。一人一人が静かに作品に向き合っているイメージがあります。だから、こうやって話しながら鑑賞していると「うるさい」って叱られちゃうこともあるらしいんです。でも、最近は、長野県立美術館もそうなんですが、「今日はおしゃべりOKな日です!」っていう「トークフリーデー」を設定している美術館もあるそうなんです。
中川さん:会話をしてもいい、そんな日が設けられている美術館があるんですね?
森:そうなんです。それで「図書館も同じだなぁ」と思いました。
子ども向けのお話会のようなイベントは別ですが、基本的に図書館での読書は、一人一人が静かに本を読むものだと思います。それはそれで、とても大切なことで、かすかな人の気配や、鳥の鳴き声を聞きながら、自分だけの読書の世界に没頭するのは幸せなことです。
でも、時には読んだ本の感想を話し合ったり、対話の中から何かを学んだりすることがあっても良いんじゃないかな、って思うんですよね。県立長野図書館の場合、3階は、そういうおしゃべりがOKな、対話から学び合う場として「信州・学び創造ラボ」というスペースがあります。静かにしたい人のためのスペースもあって、目的によって自分が一番居心地が良い場所を選べるようになっています。
今回は『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』という本を通じて、美術館や図書館の、いろいろな楽しみ方について考えてみたいな、と思ってご紹介しました。興味を持っていただいた方は、例えば『目の見えない人は世界をどう見ているのか』という科学的な本や、この本を題材にしたヨシタケシンスケさんの絵本『みえるとか みえないとか』も、おススメです!
中川さん:あるテーマに興味を持った時に、どんな本がありますか?と、図書館のカウンターで相談できるんですよね?
森:はい、ぜひお気軽にご相談ください。
図書館からのお知らせはありますか?
森:県立長野図書館の夏休み企画「ナツとしょ2023」をご紹介します!
一つは、大人も子どもも楽しめる、書庫内ツアー。普段は入れない図書館の秘められたスペースを案内しますので、冒険気分でご参加ください。
小学生高学年向けには、「図書館攻略大作戦」。いろんな謎を解きながら、図書館を上から下まで探索します。
他にも、夏休みの自由研究・工作のヒントになりそうな自由研究に関する本の展示もしています。詳しくは、当館のウェブサイトから。
最後に、中学生のお二人へのメッセージをお願いします
森:今回は、「アクセシブルライブラリー」や、アートの鑑賞についての本を取り上げてみました。実は、図書館ではこれまでも、文字が大きい本や、点字の本、録音の本など、さまざまな形で、誰もが読書をしやすい環境づくりをしてきました。
中学生のお二人には、図書館とか、美術館とか、学校でもそうかもしれないけれども、どんな場所にもいろいろな特徴を持った人たちがいて、みんなが一緒になって世界を形作っている、ということ。そして、いろいろな考え方や見方にふれることで、新しい世界が発見できることを、お伝えしたいなと思いました。
身近なところから、「みんなが幸せに生きるってどういうことなんだろう?」って考えてみる、きっかけになったら嬉しいです。
中学生のお二人は、始めはちょっと緊張もしていたようですが、元気よくいろいろな意見を言ってくれました。「もともと、県立図書館に行ってみたいと思っていたけど、絶対行きたいと思いました!」とのこと。嬉しいですね♪♪
あなたもお近くの図書館に、遊びにいらっしゃいませんか?
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