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“白馬のホットステーションを目指して”(2)

I♥信州(あいラブしんしゅう)
“白馬のホットステーションを目指して”(2)
今だから出来る理想の生活へのスタート

「I♥信州」は、長野県外から信州へ移住された方に、移住のきっかけや信州での暮らしの様子をお伺いし、長野県の魅力をさらに伝えていこうというコーナーです。

第9回目のI♥信州は、2010年に愛知県名古屋市より北安曇郡白馬村に移住された、伊藤光泰さん・恵美さんご夫妻。
前編では、白馬村に移住された経緯などのお話をお聞きしました。
◆前編はこちら

後編では、情報発信基地としての「珈琲せんじゅ」や伊藤さんご夫妻の共通の趣味であるスキーの新たな楽しみ方、信州への移住を考えている方へのメッセージをお聞きしました。


■ひとつのパン、一杯の珈琲に愛情を込めて


伊藤さんご夫妻が経営している喫茶店「珈琲せんじゅ」では、自家製天然酵母を使用したパンと自家焙煎のコーヒーがいただけます。店内に足を踏み入れると香しいパンの焼ける匂いと、コーヒーのアロマに癒されます。
光泰さんはパン作り、恵美さんはコーヒー作りを担当し、お客様に美味しいものを提供したいと日々の研究に余念がありません。どちらもご夫妻のこだわりと想いがつまった逸品揃いです。

恵美さん:「酵母も珈琲豆も生き物。
自分達がこうしようと思っても、思い通りにいかないことの方が多いです。
でも焼きすぎちゃったかな、という豆でも、珈琲にして飲んでみると美味しいじゃん!ということがあったり、豆に教えてもらいながら楽しんでやっています。
私は、茶道をずっとやっていたのですが、珈琲も茶道も文化ですし、何か通じるものがあると思っています。」

恵美さん:「自分の中の五感をすべて注いで、一杯の珈琲をお出しする・・・珈琲は、人とのコミュニケーションをとる一つのツールであると思います。
ここで他人同士が知り合ったり、私達が情報を伝えたことでその方のお役に立てたり、逆にお客様から幸せを分けていただけるときは冥利に尽きます。
珈琲の味、パンの味だけじゃないものを求めてきている方が、価値観を共有できるのはうれしいですね。」

光泰さん:「「珈琲せんじゅ」は喫茶店というより、コミュニティスペースと言った方が良いのかもしれません。店内には、白馬の観光パンフレットなども置いてありますが、珈琲を飲まなくても、白馬の情報を聞きに来たというだけでも良いし、店内から見える白馬の山々を見に来たというお客様もいらっしゃいます。訪れた人それぞれの利用の仕方がある、「珈琲せんじゅ」という空間を自由に使ってほしいと思います。」


黒漆喰の石釜から焼き上がるパンはどれもおいしそう!(写真上段・提供:伊藤光泰さん)
珈琲も一杯、一杯丁寧に淹れています。

茶道の世界の「一期一会」、一度きりの出会いを大切にする考えと、お客様をお迎えする「おもてなしの心」が「珈琲せんじゅ」の店内にあふれています。
「珈琲せんじゅ」で頂ける一つのパン、一杯の珈琲にはそんな伊藤さんご夫妻の想いがつまっています。

この「珈琲せんじゅ」の名前の由来は光泰さんが名古屋でイベント関連の事業を独立開業した当時の屋号です。様々な問題解決に「千の手」で取り組む光泰さんの真摯な姿勢を表した屋号で、白馬での珈琲店開業の際もこの「せんじゅ」を屋号としました。

■白馬の新たなホットステーションを目指して

スキー王国・長野県。スキーシーズンが始まると、多くの観光客が長野県のスキー場で足を運びます。
しかし、ピーク時よりスキー人口が減り、やむなく営業を停止するスキー場が増えていることも現実です。

学生時代からスキーに親しんでいる伊藤さんご夫妻は、もっと多くの方にスキー場や雪山の楽しみ方を知ってほしいと、仲間とともにNPO団体を立ち上げ、イベント活動などに取り組んでいます。

光泰さん:「高齢になるにつれて、スキーはできないんじゃないかと思っている方はたくさんいます。でも、滑るだけがスキー場の楽しみ方ではないんです。
ノルディックウォーキングで、山の中を歩くこともできますし、ゲレンデのレストランに行って食事をしても良い。スキーヤー・スノーボーダー達しか使えない、なんてことありません。
どんなスポーツでも危険はつきものですが、それ以上に体感できることはたくさんあります。
スキーだけが雪山の魅力ではないので、もっと深い枠で考えて、こんな楽しみ方もある・こんなことができるという情報を伝えていきたいと思っています。」

恵美さん:「長野県はスキー場がたくさんあるし、観光資源としても素晴らしいです。
でもスキーしてる方にだけアピールしても、スキー人口って中々増えていかないと思うんです。
本当の意味で裾野を広げるために、スキー場のいろんな楽しみ方を伝えることが大切なんじゃないかと、活動に取り組んでいます。
雪があまり好きではない人でも、もし雪が楽しいと思ってもらえれば、毎日雪があるこの環境って素晴らしいですよね。そうすると冬の雪山のイメージが変えられるんじゃないかと思っています。」


店内には伊藤さんご夫妻愛用のスキー用品が!

遊び方の引き出しがあるほど、スキー場は楽しいものになる、その日の天候に合わせて、自然と遊べるところで遊ぶ・・・それを多くの方に知ってほしい、と語る伊藤さんご夫妻からはスキーに対する情熱や自然への想いが伝わってきます。

「珈琲せんじゅ」は、雪山や雪に親しみがない人達をつなぐ、白馬の新たなステーションとして地元の方・観光客の方に今日も愛されています。

■信州へ移住を考えている方へのメッセージ

最後に、伊藤さんご夫妻にこれから信州へ移住を考えている方へのメッセージをお聞きしました。

光泰さん:「移住を考えている方には、地域の良さも悪さも包み隠さず話すようにしています。
大変だったところもすべて話して、それでも住んでみたいかどうか考えてもらう方がその人のためになると思いますし、ファイト!ファイト!といって、実際に移住してみたら違ったなんて悲劇じゃないですか。最初につらいことも知っておけば、苦労も楽しいことに変わるんじゃないかなと思います。
つらい思いをして、それが白馬、長野県のイメージダウンになってしまうのは悲しいですから。」

恵美さん:「白馬で言えば、雪がすごいというのはみなさん分かってるんだけど、実際私達はどう対処してるのかとか、住んでみてどうか、ということが知りたいんですよね。
今、除雪は駐車場の部分を業者さんにお願いしているんですが、当初は小さいサイズの除雪機で大丈夫だろうと思っていたんです。
でも友人から「それじゃあ追いつかない」とアドバイスをいただいて、なおかつ「こういう業者さんがいる」という情報を教えていただいて、実際すごく助かりました。でもそういうことって都会からきた私達には分からないことなんです。友人の本音のアドバイスがとてもありがたかったですね。
私達はそういう恩恵を受けて、ここで生活することが出来ているので、移住のことを聞かれる方にはすべてお話しています。」


和モダンの店内にはカウンター席のほか畳席も用意されています。
どこからでも白馬の山々が望めるなんとも贅沢な空間!
石釜や暖炉に使う薪は、光泰さんが行なっており、
地元の方とのコミュニケーションにも一役買っています。

光泰さん:「喫茶店を経営していると、土日も営業があるので地域の行事や集まりなどにはあまり参加することができなくて、本当の意味では地元の方々とのお付き合いはまだ足りないなと思っています。
でも、外で暖炉にくべる薪を割っていると、おじいさんから「そんなやり方じゃだめだ」といって薪割りを教えてくださったり、お隣や近所の方が良い方なのがとても助かっています。」

恵美さん:「ここで喫茶店をしていると、関東・関西・中京圏と色んな地域の方が訪れてくださいます。
そうすると、私達も色んな情報を得ることができて、自分達が錆びないですね。
観光地をある側面からだけ見るのではなく、様々な方向から見て、偏りなく情報を発信していけたらと思います。」


「珈琲せんじゅ」の看板猫(?)茶太郎くん(左)。
営業中は2階でお休みです。
店内にあるメニュー立てなどインテリアにも猫がいっぱい!

スキー、酵母、珈琲・・・自然と向き合っている伊藤さんご夫妻だからこそ、言葉のひとつひとつがすっと入ってきます。

飾らない・自然体で接する姿勢が、地元の方や訪れる観光客の方々に愛される所以なのかなと感じました。

【インタビュー時期・2013年3月】

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