2025.03.14 [ 山好き館長の信州便り ]
本を介した人と人との出逢い(FMぜんこうじ「図書ナビ」第24回)

PTA母親文庫の配本所マップ
ここには、「本を読む」以外に、プラスαの、家族の間の交流が生まれていますよね。これは本当にたくさんある文集の中の一つの例です。信州中で、読書活動が展開されました。ラジオをお聞きの皆さまも、もしかしたら「母親文庫」、聞いたことがあるよという方、いらっしゃるのではないでしょうか?
中川さん:私、母が「PTA母親文庫」のことを話していたような記憶があるんです…!
森:おー!それは嬉しいです!松川村図書館の棟田聖子館長さんも、「家にあった子ども向けの全集を読み尽くしてしまった小学校高学年の頃、母の手元に回ってくる母親文庫の本を読むのが楽しみだった、お母さんと同じ本を読んで本の話をすることが、ちょっと大人になったようで嬉しかったなぁ。」と思い出を語ってくださいました。本を媒介にしたコミュニケーション、母と子、親と子の間に生まれる絆、これからも大切にしたいですね。
一方で、この多様性の時代、誰もがそういう親子関係を持てるとは限りません。講演をしてくださった山﨑さんは、こんなエピソードもお話ししてくださいました。北欧では中東からの移民が増えているそうです。移民の人たちは生活習慣も違うし言葉が話せなかったりするし、多くの場合「支援される」立場です。でも、図書館では、移民の人たちが自分の母国語で本の読み聞かせをするというイベントを開催しているそうなんですね。北欧にも、中東の言葉を学びたい人はいる。その先生役の人が身近にいてくれるのは有難い。いつも「支援される」だけではなく、自分も誰かの役に立てる。「支援する」こともできる。そういう相互関係が本を媒介にして生まれているのが、素敵ですね。
中川さん:読書は、「本と人」とをつなぎ、その先にいる「人と人」とをつなぐものなんですね。

今月のおススメ本
今月のおススメ本は? 子どもも大人も一緒に読める3.11にちなんだ本をご紹介
森:中川さんの冒頭のお話にもありましたが、今日は2011年3月11日の東日本大震災、福島第一原子力発電所事故から14年。そして3月12日には長野県北部地震が起きました。
被災地において、震災後に生まれた子たちは、当時何が起きたのかを体験していないですし、震災後に移って来た人もそうです。体験した人とそうでない人との溝が、どうしても開いて行ってしまう。…それが悩みになっているそうです。そこで、今の子どもたちが震災を知り、自分ごととして、自分を守る意識につながるための本が最近でも出版されているんですね。例えば『2人の天使にあったボク』リーブル出版(2024.3.11)は、お子さんを亡くされたお母さんたちが出来事を振り返り、子どもたちに分りやすく伝え、これからに生かしてほしいと。これだけの年数を経てそのような気持ちになれたということで、出版されたそうです。
そこで、今日は震災に関する多くの本の中から、子どもにも大人にも読んでもらえたらいいな、と思う本をいくつか持ってきました。
指田和『つなみてんでんこ はしれ、上へ!』ポプラ社(2013)
子どもたち、先生方、家族、地域の人たちが普段から避難訓練をしていた効果もあって、全員が助かった岩手県釜石市立鵜住居小学校の実話に基づく絵本です。力強い画と子どもたちが実際に辿った避難経路の地図が印象的です。
豊田直巳『福島に生きる凛ちゃんの10年』農山漁村文化協会(2021)
福島県飯舘村は、原発事故の影響で全村避難となります。今でも健康被害が出ていないか検査を継続されているとのこと。2017年に帰村できるようになりましたが、戻ったのは住民の2割ほどだったそうです。この間の凛ちゃんの成長を記録した写真集。凛ちゃんの明るい笑顔に励まされつつも、いろいろと考えさせられます。
田沢五月『海よ光れ! 3・11被災者を励ました学校新聞』国土社(2023)
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