2025.03.14 [ 山好き館長の信州便り ]
本を介した人と人との出逢い(FMぜんこうじ「図書ナビ」第24回)
3月の図書館はイベントが目白押し!
中川さん:さて、3月に入りましたね。期末でお忙しい方も多いと思いますが、図書館の3月は?
森:3月の図書館は、イベントが目白押しです。これから開催予定のイベントでは、3月15日(土)の午前中に、ラボカフェ「科学するとはどういうことか:中学生が理科の授業で考えたこと」というイベントがあります。長野市内の中学校の探究授業で、お天気について調べた中学生たちが、その成果を発表したり、部活での活動を発表する会です。

長野県教育振興基本計画コンセプトブック
長野県では、「一人ひとりの“好き”や“楽しい”、“なぜ”をとことん追求できる「探究県」長野」というキャッチフレーズで、新しいワクワクするような学びで未来をつくろうと呼び掛けています(第4次長野県教育振興基本計画)。今回発表してくれる探究の授業では、観測器具まで自分たちで作ったり、科学的な根拠も踏まえながら取り組んで来た成果を、せっかくだから学校の中だけではなく、学校の外でいろいろな人たちに聞いてほしいということで、図書館で発表していただくことになりました。
「どうして図書館で、探究授業の発表会をするの?」って、驚かれるかもしれませんね。図書館は、主に本を読んだり借りたりする場所というイメージがありますが、読書に加えて、もっと広く知ることや体験できることも、大切な機能なんじゃないかと考えているんです。それに、探究の授業ではちゃんとした根拠に基づいて研究を進める必要があるので、実は本を読むことも大切なプロセスの一つなんだと、担当の佐々木宏展先生もおっしゃっています。3月15日(土)は、ちょうど春休みが始まる日。申し込みは不要です。ぜひ、応援に来ていただければと思います。
中川さん:探究をするにしても、本を読むことは大切なんですね?面白そうです。
「読書」の本質をとことん考えてみた
中川さん:さて今日は、どんな話題でしょうか?
森:先ほど、図書館は「読書」するだけじゃない、というお話をしました。でも、もちろん「読書」が大切な活動の中心にあることは間違いありません。今日は「読書」という営みを、真正面から考えてみたいと思います。実は先日、図書館で「読書の未来 信州の読書の歩みを道標として」(令和6年度信州発・これからの図書館フォーラム第3回)というイベントを開催しました。メインのお話は長野県の「PTA母親文庫」で、長年その研究を続けて来られた、諏訪出身の研究者、山﨑沙織さんに講演をしていただきました。
中川さん:PTAは、最近ちょっと難しくなってきていると聞きますよね。

『図書館、そしてPTA母親文庫』
森:そうですね。現在はPTAというと、負担感という文脈で語られることが多いですよね。「PTAの会費でも学校図書館の本を買っているから、PTAに入らない場合は本も読めないの?」(そんなことはないよね?)といった話題がニュースになったりしました。
「PTA母親文庫」は、戦後の1950年から2013年(2014年)頃まで、60年以上にわたって信州各地で展開されました。当時、お母さんたちは農業をされていたり、家庭内のことが忙しく、なかなか本を読む機会が無かった。そこで、信州大学附属学校の保護者のお母さんたちが、自分たちにも本を貸してほしいと声を上げたのがきっかけだったそうです。そこで、県立長野図書館の第3代叶沢清介館長(在任:1949年〜1965年)が、仕組みをつくりました。県立図書館の本を、県内のいろいろな場所(配本所)にまとめて置いて、それをお当番のお母さんが選んで学校に持ち帰り、その本を子どもたちがお家に持ち帰ってお母さんに読んでもらうという仕組みができたんです。詳しくは『図書館、そしてPTA母親文庫』日本図書館協会(1990)にて。
県内には、須高や中高、更科や埴科など16ヶ所の配本所ができました。そして、そういう配本所単位や学校単位で、お母さんたちの「文集」も数多くつくられました。例えば、1968年に松筑地区で発行された『風車』という文集には、こんなような文章が掲載されています。
「私は農家で早春から晩秋まで忙しい。せっかく本を持ち帰ってもらっても、うとうとして読むことができない。そうしたら、中学2年生の長女が“私が読んであげる”と言って、読んでくれるようになった。これがいろいろな効用があって、一つには、長女の国語の成績が良くなった」という実利的な話もあるのですが(笑)、「それまであまり学校のことを話さなかったり、父親と話さなかった長女がよく話をするようになった」そして「読んだ本のことについて、語り合えるようになった。何より、長女の優しさが嬉しかった」と…。
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