郷土図書展示の悲劇…… ※写真閲覧注意!?

だんだんと気温が下がり、布団から起き上がることが億劫に感じる日が多くなりました。そろそろ本格的な秋模様です。

当館2階一般図書室内郷土展示コーナーでは、「いろんな“き”になる信州」をテーマとして資料を展示しています。現在は、“樹”・“奇”・“起”から連想される資料を集めています。
展示の詳細は以前書いたブログ「郷土図書展示:「いろんな“き”になる信州(前半)」」をご覧ください。

(この先、虫食いなどの写真があります。)

ある日、展示コーナーを整理していたら「パリパリ…」と小さな音が聞こえてきました。どこからだろうと探してみると、コーナーに置いてある原木のひとつ、ブナの木から聞こえています。

ブナの木の日ヒビ割れの写真

展示コーナーには、長野県林業総合センターからいただいたブナやサクラなどの原木を本とともに展示しているのですが、当初に比べるとヒビが入り、樹皮と中の間にも隙間ができていました。少し木くずも落ちています。

異変はブナだけではなく、サクラの木は細かい木くずが大量に落ちていました。

これはもしかして…虫食いでしょうか!?

 

紙の資料を保存する図書館では、虫が館内にいることは避けたいものです。急ぎブナとサクラをバックヤードに持っていきました。

まずはサクラ。少し振るだけで大量の木くずが落ちてきます。樹皮をはがしてみると…

桜の木の虫食いの写真
▲サクラの木            ▲ブナの木

虫の歩き道です。迷路のような細長いくねくね道が縦横無尽に続いていました。もう少し樹皮をはがしてみると、米粒くらいの大きさの小さな幼虫が何匹も出てきました。

次はブナ。隙間から樹皮をはがしてみると、こちらも虫の歩き道らしき溝がありました。虫は見つけられませんでしたが、1匹はいると思われます。

ブナは調べている間も「パリパリ」と音がしていました。最初は虫の咀嚼音かと思いましたが、虫が大量にいたサクラからは音はしませんでした。

この音は原因が違うのでは? と思い、当館の資料で調べてみることにしました。

調査開始

最初は書架に行って資料探しです。

日本十進分類法(日本の図書館で多く使われている図書の分類方法)の657分類は「森林利用.林産物.木材学」の分類です。まずはブナの木について調べてみることに。

ブラウジング(書架の並んでいる資料を端からみていくこと)して、目についた資料から調べてみると下記資料にこんな記述がありました。

  • 『板目・柾目・木口がわかる木の図鑑―日本の有用種101』西川栄明著 創元社 2021【657.2/ニタ】p.170-171 ブナ
    「(前略)材は、(中略)乾燥時に暴れやすいが割れにくい(後略)」
    「(前略)伐採して短期間で変色しやすい、乾燥時に暴れやすいなどの短所もある。(後略)」
  • 『実用木材・木質材料小事典』梶田煕ほか著 東洋書店 2013【657.03/カヒ】p.197 ブナ
    「(前略)乾燥困難で狂いやすく、未乾燥材の耐久性小。(後略)」

「暴れる」「狂い」については、以下の資料で意味を確認しました。

  • 『建築大辞典』第2版 彰国社編・刊 1993【520.33/ケン】p.42 あばれる[暴れる]
    「材料や仕上げ面が乾湿の変化などによって狂ったり,曲がったり,よじれたりすること.「狂う」ともいう.」
  • 『木材・樹木用語辞典』木材・樹木用語研究会編 井上書院 2004【657.03/モク】
    1.木材の組織・材質・物性 p.13くるい[狂い]
    「木材の乾燥や加工時に生じる変形。(後略)」
    2.製材・加工・乾燥 p.59くるい[狂い]
    「樹木が成長するときに発生する成長応力や,乾燥によって発生する応力で生じる反り・ねじれ等の変形。(後略)」

『木材・樹木用語辞典』にはほかにも、乾燥が原因で割れる干割れ(ひわれ)、成長などが原因の心割れ(しんわれ)などの用語が掲載されていました。

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