2024.03.12 [ 山好き館長の信州便り ]
想いを寄せ続けること(FMぜんこうじ「図書ナビ」第12回)
2021年に、アニメ映画にもなっています。キワお婆ちゃんの「みんな自分にできることをやるしかないのさ」という決意を込めたセリフに、勇気づけられました。
中川さん:本の表紙、柔らかいタッチで岬にある家と家族になっていく登場人物たちが描かれていて、素敵ですね。
二冊目は、『復活の日』
森:小松左京さんの『復活の日』は1964年のSF作品で、草刈正雄さんの主演で映画化もされたので、ご存じのリスナーの方も多いのではないかと思います。2009年には、児童向けにリライトされたものが、ポプラ社から出ています。
(ネタバレになっちゃうんですが)、生物兵器として開発されたウィルスが、盗まれて、事故によってまき散らされてしまいます。そのウィルスに感染して、地球上のほとんどの人が死に絶えてしまう中、南極の観測所だけは感染を免れるんですね。世界各国の科学者が連携し、ここで生き抜こうとするのですが、つかの間の平和も「アラスカで地震が発生する予測」によって破られます。その地震がきっかけで、世界中の核兵器が作動してしまうというのです。最悪、南極の基地も核兵器で攻撃されてしまうかもしれない、という危機が訪れます。そこで、草刈正雄さん扮する日本人研究者が、核兵器の起爆装置を解除しに行く事になるのですが…。
1964年の作品で、今が2024年なので、ちょうど60年前の作品ですね。でも、そんなに昔の話とは思えないほどに、現在の世界が抱える問題が描かれています。
最後に、どうなるのか。そこは、映画や小説でぜひ確かめてみていただきたいのですが、人間は弱くて、そして強いのだな、と。沢山の過ちも犯すけれども、人を救うこともできる存在なんだなと。最後は、希望をもつことが出来るので、とても好きな作品です。
中川さん:こちらの本はちょっと雰囲気が違っていて、シリアスな感じです。でも「最後に希望が持てる」のが良いですね。「震災後文学」というカテゴリーがあるというお話でしたが、初めて聞きました。どんな作品があるんですか?
森:ノンフィクションや写真集、物語などさまざまなのですが、私は人が避難した後に残された動物たちを追った、太田康介さんの写真集『のこされた動物たち―福島第一原発20キロ圏内の記録』が印象に残っています。私は「デジとしょ信州」で借りて読みました。
最近でも「津波てんでんこ」といった、東日本大震災の教訓を伝える絵本『たったひとつのおやくそく』が3月17日に出版されるようです。作者は、中学生の頃に阪神大震災を経験された神戸市在住の絵本作家、金澤麻由子さん。この本はぜひ取り寄せて、読んでみたいなと思っています。自分の経験を、少しでも人の役に立てたいという想いは、本当に尊いですね。私たちに出来ることは「想いを寄せ続けること」なんだろうと思います。
中川さん:感覚をマヒさせるわけではないのだけれど、日常の中で時には忘れたり、でも大切なポイントで思い出したり。本に触れることが、想いを寄せるきっかけになりそうですね。
リスナーの皆さまへのメッセージをお願いできますか?
森:今年は3月になってから寒さがぶり返してきました。でも、もう少しの辛抱だと思います。水仙やクロッカス、ヒヤシンスやチューリップなどの「球根」は、厳しい寒さに遭うからこそ、美しい花を咲かせることができるのだそうです。花咲く季節を思いながら、寒さを乗り切っていけたらと思います。
図書館前の若里公園は、早春には雪柳やコブシの花が咲き、桜の樹も沢山あります。ぜひ、図書館にも足をお運びください!
※こぼれ話
「図書ナビ」が始まって、1年経ちました。4月からも継続だそうです。中川さんや、リスナーの皆さまと、またラジオでご一緒させていただけるのが楽しみです。これからも、どうぞよろしくお願いいたします!
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