2024.03.12 [ 山好き館長の信州便り ]
想いを寄せ続けること(FMぜんこうじ「図書ナビ」第12回)
さて、今日はどんな話題ですか?
森:昨日は、東日本大震災から13年でしたね。 中川さんは、3.11の時、或いは、翌日の北部地震の時はどうされていましたか?
中川さん:企業を辞めて家にいた頃でした。怖かったですね。いろいろな映像が流れてきて。最近は大きな災害が多くて、その時々で感じていることが、どの災害の時だったのかな?と思うようなこともあります。
森:私は当時、東京で働いていました。ビルの21階にいたので、結構揺れて怖かったです。エレベータが止まり、電車も止まったので、その日は職場に泊まりました。 翌日、家に戻ったら、食器棚からほとんどの食器が落ちて、割れていました。猫も、ケガはなかったのですが、かなりおびえていました。
職場では、「計画停電」といって、一日の内、何時間か電力が止まる時間帯があって、当時はデータベースの運営をしていたので、サービスを断続的に止めなくてはならないのが大変でした。
でも、コロナ禍の時もそうでしたが、今現在、生命がかかっている人たち、生活がかかっている人たちのことを思うと、自分たちの仕事は最優先とは言えないだろう。と。 少し落ち着いてきたら、復旧・復興のために必要な情報だったり、日々の癒しになるような本が必要になった時に、届けられるように準備していたい、そういう思いでした。
ラジオのお仕事は、いかがですか?
中川さん:そうですね。いろいろな情報を伝えることがラジオの役目です。悲しいことも、現実も。落ち着いてもらいたいという気持ちもあるし。声を届けるときには「元気になってほしい。癒しでありたい」そんな想いを持っています。「出来る時に出来る事をするしかない」という感じがしますし、図書館とも、似ているところがあるかもしれませんね。
今日のおすすめの一冊をお願いします。
森:今回は、一冊に絞れなかったんです。
「震災後文学」というカテゴリーがあるんですね。ドキュメンタリーであったり、物語であったり。さまざまな本が出されています。震災の教訓を忘れないように、とか。癒しになるように、とか。
13年という月日は、小学1年生だった子どもさんが、成人するまでの時間に相当するんですよね。どんな境遇にいても、まずは自分自身を大切にしてほしいなと思います。
そして周囲の人たちの助けも借りながら、いつか自らも役に立てるようにと、ひたむきに生きる人の記事を読んで、励まされました。1月の能登半島の地震もそうですが、日本でも世界でも大きな災害が起っていて、それなのに戦争も続いていて、「人間同士が争っている場合ではないのに」と思ったりしています。
一冊目は、『岬のマヨイガ』
森:一冊目のオススメ本は、岩手県出身の児童作家、柏葉幸子(かしわば さちこ)さんの『岬のマヨイガ』(2015年)です。マヨイガというのは、東北地方に伝わる、訪れた人に富をもたらすという、山の中の幻の家です。震災で一人ぼっちになった女の子が、妖怪たちと話せる不思議なお婆ちゃん(キワさん)たちと出会い、一緒に暮らすようになります。遠野物語を思わせるような、河童などの不思議な生き物も大活躍して、みんなで力を合わせて魔物を追い払います。そういう中で、それぞれの登場人物が抱えている辛い思いを吐き出し、ほんとうの「家族」になっていきます。
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