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戦後70年特別展 『発禁 1925-1944;戦時体制下の図書館と「知る自由」』(1)

『昭和十年度 日誌 上伊那図書館』(伊那市創造館・伊那市立伊那図書館収蔵)

上伊那教育会が昭和5年に設立した郡図書館「上伊那図書館」の業務日誌です。こちらにも警察(伊那警察署)による」差押え、没収の記録が残っています。


昭和10年にあった「天皇機関説事件」。
これは東京帝国大学法学部教授美濃部達吉の憲法学説(「天皇機関説」)について、昭和10(1935)年2月18日に貴族院で貴族院議員菊池武夫(陸軍中将・在郷軍人議員)が、同学説は「団体に対する緩慢なる謀反」であり、美濃部は「学匪」「謀反人」であると非難して、政府に断固たる措置を求めたことから始まった事件です。

政府は議会終了後に美濃部を取り調べることを警察に指示するとともに、4月10日は出版法違反を理由に美濃部議員の著書『憲法撮要』『逐条憲法精義』『日本国憲法ノ基本主義』の3冊を発禁処分としました。

 

上記に掲載した写真をよく見ていただくと、この『憲法撮要』の記述がわかるかと思います。(『出版物差押通知接受簿』の見開きにしているページ右端、『発禁閲禁図書目録』の最下行)

『出版物差押通知接受簿』にある日付は4月10日。

政府が下した処分はその日のうちに、この長野の一図書館まで伝達されたんですね。

 

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『憲法撮要』美濃部達吉,有斐閣.1929.

これがその本です。当時、当館では版の異なる2冊を所蔵しており、両方とも警察へ提出した後返還されたようですが、現在はこの1冊しか残っていません。返還後、再度受入されました(右側写真:受入印の日付は「昭和21年5月25日」となっています。 )

 


 

国民が知らないところで、情報が消えていったこと。

そしてその行為に、本来「知る自由」を保障すべき機関である図書館が加担していたこと。

二度とそんな時代が来ないことを祈ります。

 

そしてなによりも、今日は70回目の終戦記念日。

この記録たちが、皆さまが今一度「平和とは何か」を考えるための材料となれば幸いです

 

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