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信州ブランドアワード2023 しあわせ信州部門 大賞 「信大クリスタル」

 

しあわせ信州部門 大賞
「信大クリスタル」
2023テーマ「共創によるイノベーションが生み出した事業・製品・サービスを提供するブランド」

信州発の技術と素材が生み出すイノベーション


信州大学 信大クリスタルラボ
所長/卓越教授 手嶋 勝弥さん(写真中央)
副所長 土井 達也さん(写真左)
研究員 片庭 惇さん(写真右)

蛇口をひねれば安全・安心な水が出てくる日本。しかし、国土交通省の資料(2021年版『日本の水資源の現況』)によると、世界でそのまま水道水が飲める国は12ヵ国ほどというのが実情です。水道設備自体が普及していない地域も少なくありません。
そんな世界の水問題のソリューションとして注目を集めるのが、信州大学(信大)が長年の研究の末に生み出した高品質で高機能な結晶材料「信大クリスタル®」。この機能性結晶を使えば、水中の有害物質を取り除け、世界中の水を安心して飲めるおいしい水に変えることができるかもしれない。そうした高い浄水能力を発揮する「信大クリスタル®」が、2023年度の信州ブランドアワード「しあわせ信州」部門の大賞を受賞しました。

研究の中心を担ってきたのが、同大学の卓越教授・手嶋勝弥さんです。2005年に赴任した手嶋教授の専門は結晶化学。結晶とは、原子や分子が規則的に並んだ状態の物質の固体で、物質がもつ特性が最大限に発揮される性質があります。その特性を生かし、シリコンや水晶などの単結晶素材がすでに広く活用されています。

▲水から重金属イオンを除去する単結晶である「信大クリスタル®」を説明する手嶋教授


▲宝石や鉱物も自然界で物質が結晶化したもの。写真は人工的に作り出した六方両錐のルビーの結晶

手嶋教授は「フラックス法」という手法を駆使し、これまでに数多くの高純度の人工単結晶を多数生み出してきました。この「フラックス法」の原理は至ってシンプルです。食塩を溶かした飽和水溶液を冷やし、食塩の結晶を取り出す方法と同様で、溶媒(フラックス)に原料を加熱溶解させ、冷却や蒸発させることで物質を結晶化させるのです。

仕組みは明快ながら、重要なのは、どんな溶媒や温度などで結晶を生成するかという作り方、つまりレシピ。手嶋教授はさまざまなレシピを開発し、水の中に含まれる不要な重金属イオンや有害な分子など特定の物質に狙いを定めて除去するといった、目的に応じた機能をもつ単結晶を生成するノウハウの構築に成功し、世界をリードしてきました。この技術で生成された機能性無機結晶材料は、なんと300種以上。その総称が「信大クリスタル®」です。

 

▲重金属イオン除去材は粉末の結晶材料。少量でも水中に溶け込んだ重金属イオンを迅速に除去する


▲ラボでは約30名のスタッフが日々研究を重ねている

この特定の物質を取り除く機能を生かし、信州発の結晶材料は、現在、国境を超え、アフリカ・タンザニアへ。実証実験として、過剰摂取は有害となるフッ素が高濃度で含まれる現地の地下水を「信大クリスタル®」で浄水しています。電力やポンプなどのエネルギーが不要な浄水プラントで、重金属イオン除去材の場合は約100kgの「信大クリスタル®」を使用し、耐久性は20年と想定されるそう。さらに、浄水は飲用だけでなく、家畜の飲み水や農業用水にも活用され、生活向上に大きく寄与しています。

「この『信大クリスタル®』の機能を活用し、今後は各地の環境や状況に応じた工業用水や排水・廃水処理などにも利用できるほか、災害地や過疎地での浄水処理などにも貢献できるようになります」と手嶋教授は語ります。

▲現地の人の協力も得てタンザニアに設置した「信大クリスタル®」の浄水プラント(信大クリスタル®公式Xより)

そしてもちろん、信州でも「信大クリスタル®」は広がりを見せています。マイボトル専用の給水機「swee(スウィー)」が、そのひとつ。浄水フィルターに重金属イオン除去材と塩素を除去する活性炭を使った給水装置で、老朽化した配管などから水道水に溶け込む可能性がある特定の重金属イオンのみを選択的かつ高効率に除去した水を給水できます。メンテナンスは年1回程度のフィルター交換のみ。低コストで簡単に設置できるのも特徴で、大学構内はもちろん、JR松本駅や松本空港などにも導入が進んでいます。

▲「信大クリスタル®」が搭載されたアクアスポット「swee」。重金属イオンを除去したうえで、水の個性となるミネラル分を残したおいしい浄水を持参したボトルに無料で給水できる

▲「swee」に先駆け2018年に販売開始した携帯型水道水用浄水ボトル「NaTiO(ナティオ)」。エコで持ち運びも簡単

「ただ浄水するだけでなく、おいしくなることが大事です。環境のためだと言っても、便利でおいしくなければ、やはり継続したり、人に勧めたりできませんから。さらにコストも安くなれば十分ですよね」と手嶋教授。その結果、現在は飲食店などにも「信大クリスタル®」を使った浄水器の導入が進んでいますが、手嶋教授の挑戦はさらに広がります。

「結晶材料が生きる分野は多種多様で、次世代のあらゆる領域への展開が可能です。水由来の水素エネルギーをベースとする循環型都市も実現できると考えていますし、水資源が豊富な信州を『水都』と据えたアプローチもしていきたいですね」

▲大学構内には「信大クリスタル®」や「NaTiO」の紹介コーナーも

技術の応用は浄水の分野にとどまらず、超高性能かつ発火リスクのないリチウムイオン電池や電子機器など、さまざまな事業への展開も。医療分野では人体との適合性が高い人工関節の創製が行われ、環境分野では土壌改良や金属の資源回収などにも利用されるなど、幅広いシーンで活用が進んでいます。
長年の努力の結晶でもある「信大クリスタル®」。その輝きは無限の可能性を秘めています。

 

信州大学信大クリスタルラボ/先鋭材料研究所
住所:長野市若里4-17-1
電話:026-269-5556
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※この記事は2024年3月時点の情報です。

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