2024.11.12 [ 山好き館長の信州便り ]
人生は「カラフル」―自分を肯定できる生き方のために(FMぜんこうじ「図書ナビ」第20回)
秋の読書週間、どんな本がおすすめですか?
中川さん:先週まで「秋の読書週間」でしたね。秋の夜長、どんな本がおすすめですか?
森:今回は森絵都(もり・えと)さんの『カラフル』(初版:理論社・1998年7月)をご紹介します!
『カラフル』は、文春文庫の中で、高校生が選んだ「読みたい文庫」No.1になった本で、アニメ化(2010年)や、実写の映画化(2000年・2022年)、ミュージカルにもなっています。
主人公は、何かの理由で死んでしまった「魂」の「ぼく」です。突然、天使が現れて「君は生前に犯した罪により、「輪廻のサイクル」からはずされた。けれども、抽選に当たって、再び挑戦するチャンスを得た!」と言われます。そして、自殺を図った中学生の少年、「真(まこと)」の体に入って、修行することになるんです。
「ぼく」が「真」の家族と暮らすうちに、始めは理想的に思えた家族にも、欠点や問題が見えてきます。そして、どうして「真」が自殺に追い込まれてしまったのか、徐々に明かされていきます。
のっぴきならない状況なんですが、それでも、「ぼく」の魂は、やっと得られた唯一の親友や、両親、兄、ちょっと変わったクラスメイト、憧れの女の子などと関わるうちに、だんだんと、変っていくんですね。
物語の中で、こんなセリフが出てきます。中川さん、ちょっと読んでみていただけますか?
中川さん:「人は自分でも気づかないところで、だれかを救ったり、苦しめたりしている。この世があまりにもカラフルだから、ぼくらはいつも、迷っている。どれがホントの色だかわからなくて。どれが自分の色だかわからなくて・・・。」
森:人間は一色じゃない。「きれいな色も、みにくい色も。角度次第ではどんな色だって見えてくる。」間違いは誰にでもあるし、矛盾した考えや、行動があってもおかしくない。その人を構成するいろんな色の一つだし、そんな人たちが集まって、この世の中をつくっているんですよね。『カラフル』という本のタイトルは、そんな思いから来ているんだと思います。
中川さん:「角度次第では」というセリフが出てきましたが、本当にそうだな、と。見る目が違うと別の姿が見えてきますよね。
森:この本は、死んでしまった「ぼく」が生きる、やり直しの人生。一度は手放してしまった人生を、もう一度取り戻す物語です。
現実の人生でも、後悔はしたくない。だから今、できることを、精一杯やってみる。でも、それが出来なくても、自分を責めたりしないで。いつだってやり直せると信じて、諦めずに生きていきたい… そんな風に思わせてくれる物語です。
物語の良さは、時代や年齢、立場を超えて、いろんな人の人生を追体験できることですよね。秋の夜長に、じっくりと本を読んで、「自分の人生」を見つめ直し、それを受け入れて、これからの人生も大切にできるような、そんな読書体験ができたら…と思っています。
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