2025.02.11 [ 山好き館長の信州便り ]
蔦重は「文化のソーシャルワーカー」だった?!(FMぜんこうじ「図書ナビ」第23回)
「文化のソーシャルワーカー」とは?
森:「ソーシャルワーカー」は、もともとは、福祉や医療などの分野で、相談や支援をしてくれる人のことです。それを「文化」というキーワードと組み合わせたのは、イベントを企画された「信州アーツカウンシル」ジェネラルコーディネータの野村政之さんで、新しい用語です。今回は、「地域医療」、「図書館」、「まちづくり」という、異なる分野の3人が、それぞれの活動についてお話ししました。
「地域医療」は、軽井沢の森の中に「ケアの文化拠点」ほっちのロッヂをつくられた、紅谷浩之さん。重い病気を持っていたりして、特別なケアが必要な子どもたちが、「病気の症状や、年齢などで分けられるのではなく、好きなことをする仲間として出会おう」という合言葉を掲げています。いろいろなガマンを強いられることが多い子どもたちが、例えば、サーカスをやってみるなど、楽しみや生きる実感を味わえる「ケアの文化拠点」。本当に素晴らしい取組だと思いました。
「まちづくり」は、東京大学で都市工学を研究している新雄太さん。善光寺の門前や、小布施町のまちづくりなどに関わっておられます。例えば、善光寺の門前は、とても多くの空き家がリノベーションされ活用されていて、全国的に注目されているそうです。そこに実は、ある不動産屋さんの存在があって。お金儲けだけが目的ではない、何かを始めてみたい人と空き家との出会いや、その後の持続的な展開に一役かっておられるそうなんですね。その存在は、もしかしたら「文化のソーシャルワーカー」と言えるのかもしれません。
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一方通行ではなくお互いを支え合うような関係性
そして、「図書館」から。県立長野図書館の「信州・学び創造ラボ」で展開している、住民の皆さんが主役のさまざまな企画や、各地域に残されている、その地域ならではの文書や写真をデジタル化して、発信する「信州デジタルコモンズ」の仕組みについてご紹介しました。
長野県文化振興事業団理事長の吉本光宏さんと野村さんのモデレートでディスカッションもありました。一見、バラバラな活動ですが、例えば、お医者さんは「ケアする側」、患者さんは「ケアされる側」とか。図書館は「サービスを提供する側」で、住民の方は「サービスを消費する側」というような、一方通行の関係ではなく、お互いに手を差し伸べ合うような、循環する関係性が生まれつつあるのでは?と、なんとなーく、共通点が見えてきたように思います。
「文化のソーシャルワーカー」という考え方が、社会の中で共通の認識になって、いろいろな分野で楽しく取り組んで行けたら良いなぁと。このお話は引き続き、掘り下げて考えてみたいと思っています。
中川さん:はじめは「ちょっと難しいかも」と思いましたが、良い意味でゆるやかというか、いい関係性が見えそうですね。さて、今日はどんな話題でしょうか?
「大河ドラマ」にハマっています
森:実はいま、NHKの大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」にすっかりハマっていまして。蔦重(つたじゅう)こと、蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)は、江戸時代後期の版元(今でいう出版者)で、吉原で活躍した人です。
蔦重は、若い頃、貸本屋をしていたそうなんですね。例えば「さるかに合戦」など、こども向けの読み物は、赤い表紙なので「赤本」(あかぼん)と呼ばれていました。おとな向けの「青本」(あおぼん)や、洒落本など、いろいろな種類の本を、安いものだと1冊6文くらいで貸していた。当時、かけそば一杯が16文。今のかけそばが一杯400円とすると、1冊150円くらいで貸していた感じでしょうか。
ドラマの中では、女郎たちが、江戸の遊里・深川を描いた洒落本や、当時流行していた軍記物を読むシーンが出てきます。吉原から出られない女郎たちにとって、読書は欠かすことの出来ない娯楽だった。と同時に、お客との交流で、和歌や俳諧、書、茶の湯、生け花など、幅広い教養が求められ、知識を身に付ける読書は、必要不可欠だったと言われています(※)。
※「美術展ナビ」詳細なレポートが掲載されていて、参考にさせていただいています。
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「大河ドラマ」に因んだ本が沢山出ています!
蔦屋重三郎、幼少期に「本」と出会う
蔦重が版元(出版)の道を歩むようになるきっかけとして、2つのエピソードが描かれました。
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