2024.07.09 [ 体験・発見 やってみ!山好き館長の信州便り ]
図書館は「世界に通じる扉」(FMぜんこうじ「図書ナビ」第16回)
森:中川さん、ありがとうございます!「図書館は、世界に通じる扉」…というのを想像してみると、1冊1冊の本が扉で、扉を開くと、1冊1冊、それぞれの物語が拡がっている、そういうイメージが思い浮かびますね。
村上春樹さんは小学生の頃、野球も好きだったけど、図書館に行くのが何より好きだったそうです。「学校が終わると、よく自転車に乗って市の図書館に行った。そして、少年用の書物を集めた本棚を見て歩き回り、そこにぎっしりと並んだ、過去や現代の、あらゆる国からやってきた無数の物語を眺め、目もくらむような思いをした」そうです。
この、「目もくらむような思い」というのはとても共感しました。実は私は、元々、中学校の国語の先生を目指していたんです。
でも、大学生の時に図書館でアルバイトしたんですね。ゴールデンウィーク中だったんですけど、その時も村上春樹を読んでいました(今でも忘れない『ランゲルハンス島の午後』(新潮社)という、安西水丸さんとの共著です)。
休憩時間に、本棚の間をずーっと見ながら歩いてるとき、自分が一生かけても読むことはできないくらい、たくさんの、圧倒的な「知の体系」に、目がくらむような思いがしました。そして、図書館で働きたいって思ったんです。
中川さん:その時感じたことが、今のお仕事につながっているんですね? 中学生のお二人にとって、図書館はどんな場所ですか?
Aさん:図書館に行くと、1~2時間、すぐにたってしまいます。本を選ぶのに時間がかかって。 Bさん:私も、図書館にいると楽しいです。
森:図書館に来る人たちって、お年を召した方も、若い人も、子どもも「何かを求めて」来ているんですよね。そういう人たちと触れ合えるのも素敵だなと思っています。
今月の一冊は?「少年・少女の冒険の書」たち
森:今回は、村上春樹さんの『海辺のカフカ』を持ってきました。上巻の裏表紙を見ると、こんな紹介が書いてあります。
「「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」――15歳の誕生日がやってきたとき、僕は家を出て遠くの知らない街に行き、小さな図書館の片隅で暮らすようになった。」この主人公は、図書館に住んじゃうんですね。主人公は15歳。中学3年生です。お二人は?
Aさん&Bさん:13歳です!
森:(そうか…13歳、まさにティーンズですね。)「タフ」っていうのは、たくましいという意味で、肉体的な強さだけでなく、精神的な強さにも使われる言葉です。村上さんは、生き方のスタイルが定まった大人の男性を主人公にすることが多いですが、この小説では、「魂がまだ一つの方向に固定されていない、柔らかな状態」にある、「魂が揺れ動き、変動する状況」を描きたかったんだそうです。「どうですか? 魂、揺れ動いていますか?(笑)」
これって言い換えると若さの特権というか、そういう時期だからこそ、経験できること、感じられることがあるんじゃないかと思います。そして、カフカ君は家出をするんですが、「家を出るときに父の書斎から持ちだしたのは、現金だけじゃない。古いライター、折り畳み式のナイフ、ポケット・ライト…。」
冒険に出かけるとき、何を持って行くか。考えるだけでワクワクします。例えば、『エルマーの冒険』というシリーズ。エルマーのリュックの中には「チューインガム、ももいろのぼうつきキャンデー2ダース、わゴム一箱、黒いゴム長ぐつ、磁石が一つ、歯ブラシとチューブ入り歯磨き…」と、不思議なものがいろいろ入っているんですが、これが見事に物語の中で生かされます。そして、日本のものでは、はやみねかおるさんの『都会(まち)のトム&ソーヤ』シリーズの主人公。いろんな道具をリュックの中に持っていて、知恵と工夫で危機を乗り切っていきます。
こういう物語って、とてもたくさんあるので、探してみると面白いんじゃないかと思います。図書館で、「少年や少女が主人公の、冒険の話、どんなのがありますか?」って、聞いてみると、司書さんがいろいろ教えてくれると思いますよ!
今日持ち歩いているカバン、何が入っていたっけ? サバイバルに役立つものはあるかな?わたしはいつも、携帯トイレと小さなライトを持ち歩いています。
中川さん:そういえば、以前、「携帯トイレが必要になった時」のこと、話してくださいましたね。そして、図書館の司書さんにどんな本があるのか聞いてみる。人からおススメしていただいた本で世界が広がること、ありますよね。お二人ともどうでしたか?
Aさん:いろいろな本の話を聞いて、興味を持ちました。また図書館に行きたくなりました。 Bさん:読んだことがない本をたくさん紹介していただいたので、読んでみたいと思います。
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