“ Eat Local , Think Community ”信州小諸の豊かな自然と食から生まれる、新たな人の縁に可能性を見い出したのは、料理一筋、東京でその腕を磨き上げてきた二人の料理人。洋食シェフ・鴨川知征さんと、和食料理人・関浩史さんからなるケータリング料理ユニット「浅間兄弟」は小諸が育む「おいしい」に純粋に感動し、その楽しさを届けています。
鴨川さん:東京のイタリアンレストランで働いていた僕が小諸を初めて訪れたのは2014年の春。野外イベントを主催する知人に、「ゲストを招いた食事会をするので、サービススタッフとして来てくれないか?」と頼まれたのがきっかけでした。ちょうどそこに調理スタッフとして参加していたのが関さんでした。
関さん:十数年過ごした東京を離れ、地元の小諸へ戻ってきた頃にそのイベントで鴨川さんと出会い、料理に対する真剣さに共感するものがあったのですぐに意気投合しました。最終的に食事会のメイン料理を二人でやらせてもらうことにもなりました。2014年の2回目のイベントでは和食と洋食の料理ユニットとして声をかけていただき、そこから「浅間兄弟」がはじまりました。
鴨川さん: 最初はイベント限りの料理ユニットになると思っていましたが、意外にも口コミで広がり、色々な場所から依頼されるようになりました。そして、農家さんや同年代で活躍する人たちと出会ううちに、東京にはない可能性を感じるようになりました。
次第に、“ 料理で小諸を表現できたらいいな ” という思いが膨らみ、2016年に「地域おこし協力隊」をきっかけとして小諸市に移住しました。
関さん:正直、高校時代までを過ごした小諸は何もない場所だと思っていました。でも、十数年ぶりに東京から帰郷して、衝撃を受けたこともありました。それが、「四季の彩りと、豊かな食の価値」です。10代の頃には見向きもしなかったことでしたが、東京で和食の修業を続けて、改めて地元を見つめ直したときに“ 信州にはいくらお金を払っても買えない美しさとおいしさがある ” ということに気づきました。そんな信州の贅沢を小諸から伝えていきたい。その表現を「浅間兄弟」としてやろうと決めました。
鴨川さん:これまで、野外ウェディングやイベントでのケータリング、個人宅での出張料理など、たくさんの依頼をいただきました。農家さんの畑で採れたての野菜を使った料理パーティーを開催したこともあります。そんな機会を通して「浅間兄弟」の暗黙の了解となったのが、「信州の食材を現場で仕込むこと」でした。
関さん:料理人として、おいしい料理を出すのは当たり前。その上でおいしいを楽しんでもらうために、素材から現場で仕込む「ライブ感」を大切にしたいと感じたんです。そうすることで、食材の鮮度を保ち、一番おいしい状態を味わってもらえるのはもちろんですが、実際に口に入るまでのプロセスにもワクワクしてもらえますよね。結果的に、農家さんや地元の人にも、別の視点での調理の仕方や食べ方を知ってもらえて、信州の魅力を再発見してもらえるきっかけになったのではと思います。
鴨川さん:「浅間兄弟」として、これまでにたくさんの人たちと出会うことができました。小諸に移住するまでは東京でお店をもちたいと思っていましたが、そのまま東京で修業を続けていたら、いち料理人として埋もれていたかもしれません。不思議な縁でしたが、小諸に来て本当によかったです。今では東京からケータリングの依頼が来るようにもなりました。そんな体験を小諸に移住してみたいと考える人たちのモデルケースにしたいとも思います。
「地域おこし協力隊」の任期は2018年で3期目となります。これまでに担ってきた小諸の移住・定住促進の施策、移住体験ツアーの企画、空き家バンクの管理運営などを超えて、さらなる小諸の魅力をプロモーションしていきたいです。
関さん:「浅間兄弟」を続けてきたことで地元の人とのつながりも生まれ、2017年8月にカウンター割烹のお店「弁慶橋 せき」をオープンさせることができました。東京での下積み時代から、いつかは小諸にお店を出したいと思い描いていた夢が現実になりました。 「こんな和食があったのか!」という驚きとともに、新しい食の体験を通して信州の食文化の底上げをできたらいいなと思っています。
鴨川さん:2019年3月で「地域おこし協力隊」の任期が終わりますが、今後もこれまで続けてきたことを積み重ね、地元の人にも市外の人にも、小諸がおもしろいと誇りに思ってもらえるようなきっかけをつないでいきたいです。そしてこのまま小諸に根を張り、2019年にはレストランをつくる予定です。人の交流が生まれるコミュニティにしたいので、気軽に立ち寄れる雰囲気と地元農家さんの食材を使った料理を提供していこうと計画しています。
僕たちがやっているのは、これまでもこれからも「食を通じたコニュニケーション」です。いい食材をしっかり伝えていくだけ。その担い手としてこれからも「浅間兄弟」を続けていきます。
関さん:料理を通じて、おいしい、楽しいと感動してもらうことがすべてです。それを届けるために大切なのはやっぱりコミュニケーションです。信州のおいしさを伝えるために、「浅間兄弟」としてどこへでも行きますし、それぞれのお店でいつでも待っています。
そんな風に料理の楽しさに気づけたのも、「浅間兄弟」を続けてきたからです。思えば最初のきっかけは鴨川さんとの偶然の出会いでしたから、人生はどこで何があるかわからないですね。何ごとも「やるか、やらないか」の二択。やりたいことにどんどん挑戦していきたいです。
和×洋の料理、地域おこし協力隊、海外での出店などさまざまな側面をもつ「浅間兄弟」の6つの表現をご紹介します。
Point 1
自宅をセルフリノベーションし、調理場に古民家を改修して住む鴨川さん。日々の料理も出張料理の下準備もこの場所で。そんな暮らし方こそが移住のモデルケースになるのかもしれません。
Point 2
「地域おこし協力隊」として小諸の魅力を発信小諸市のまち歩きイベントで、ケータリングを担当。シェフとして、地域おこし協力隊として小諸の食と文化を届けています。
Point 3
鴨川さんの洋食御膳ご飯に合う洋食というアイデアが鴨川さんの柔軟さ。季節の野菜に洋風ソースを合わせ、見た目の想像を越える御膳に。
Point 4
「弁慶橋 せき」の割烹料理四季の訪れを感じさせる食材を厳選。料理はおまかせコース(21時以降はアラカルトあり)のみで、お客様の好みから一品ずつ調理します。
Point 5
カウンターで魅せる「おいしさ」一品が出来上がるまでのプロセスを味わえるカウンター割烹。お客様とのコミュニケーションを大切にする関さんが描いていた理想のスタイル。
Point 6
海外のフィールドで長野をPR2017年にイギリスで開催された日本食をPRするイベントに招待された「浅間兄弟」。2018年も海外で出店が予定されています。