信州魅力発掘人

信州に魅せられ、活動する人たちの言葉には「信州の魅力」が凝縮されています。信州の魅力を掘り下げ、それを語る「信州魅力発掘人」。山の強さ、美しさ、厳しさ、素晴らしさを知る人たちが「山の魅力」を伝えます。

高校教諭×山岳部 vol.2

山岳部の顧問になる前から、希望する生徒を登山に連れていっていた大西さん。山岳部の顧問になってからは、登山に欠かすことができない基礎的な知識と技術を身に付ける「安全登山」を重視した指導を行っています。

オールラウンドな生きる力を、山岳部の活動で見つけてほしい

- 山岳部を持つようになったのはいつですか?

松本美須々ヶ丘高校へ行ってからですね。そのころはワンゲル部でした。その後、木曽高校の定時制へ行って、そこでは生徒たちと野外活動をしていました。

- 山ではなく、野外活動?

登山というより、外で遊ぶ感じです。中山道を奈良井から鳥居峠を越えて妻籠まで、2年間かけて少しずつ歩いたり、木曽川でカヌーをしたり、岩登りやたき火をしたり。定時制は、地元に残って生活をしていく生徒が多いので、地元の良さを知ってもらういい機会になったと思います。皆も喜んでくれていたので。その後、池田工業高校、そして今の大町岳陽高校では山岳部の顧問です。

- 山岳部は普段、どんな活動をしているんですか?

夏は縦走と合宿、冬も合宿がメインで、1年間を4つのクールに分けて活動しています。まず4~6月は1、2年生にとっては安全登山の技術を学ぶ時期で、3年生にとっては県大会を目標に仕上げの時期になります。

夏山合宿

- 山岳部の大会って、何を競うんですか?

安全登山の技術を総合的に、100点満点で換算します。テントを張ったり、炊事をしたりする技術、読図や天気図を読んで書く技術、装備や歩き方、そしてチームワーク。おかげさまで今年は県で優勝して、インターハイにも出ました。

- おお、おめでとうございます!

長野県大会

インターハイ

ただ、大会といっても自分たちが今までやってきた安全登山の技術がどのくらいなのかを試す場という位置付けです。大会に向けて何かをするというよりは、安全登山を追及していったら、結果的に大会でも勝った、というのが僕のイメージです。インターハイに行かない年は、7~9月は夏休みの合宿がメイン。短くても3泊4日の日程です。3泊となると、どこかで必ず雨に降られますし。

- 天気が悪い状態での登山も経験させたい、と。

総合的な力がないとこなせないですから。合宿を終えて秋になったら、新人チームができるので、クライミングや沢登りなどをして、チームワークを錬成していきます。秋も連休に合わせて2泊3日の合宿を組みますね。いろいろなことを一通り経験して「山って面白い」「いろんなことができる」となってから、冬を迎える。冬は活動しない学校もたくさんありますが、僕は冬こそ生徒を連れ出すべきだと思っています。去年も乗鞍の山頂に立っていますし、今年も来週は乗鞍へ行きますよ。

クライミング

- 冬山=危険、というイメージがありますが…。

もちろん安全に、徐々にステップアップしていく必要があります。僕の場合は12月ごろに、河原で一晩、ビバークさせます。持ってきていいのは、ブルーシート1枚と寝袋だけ。そこでまず、薪を集めさせて、自分たちでたき火をします。焚き付けは紙とかじゃなくて、その場のものを使って。それで一晩でどのくらい薪が必要なのかを自分たちで勉強します。生徒たちは、行く前は何が起こるか不安でいっぱいらしいですが、終わると面白かった、また行きたいって言いますよ。

焚火ビバークを体験する山岳部員の皆さん

- 高校生、意外とたくましい…!

1月は雪の中に連れていきます。今年は鹿島槍スキー場で、リフトで一番上まで上がって、そこから150メートルくらい離れた場所で一晩泊まりました。テントじゃなくて、雪穴を掘ったり、イグルー(圧雪ブロックの簡易住居)を作ったりすることもあります。夏は登山道を歩けばいいですが、冬は雪が積もって道が消えて、どこでも歩くことができる。その分、現在地を把握することが重要だと実感できます。

イグルー(圧雪ブロックの簡易住居)作り

- 冬山のこともそうやって学んでいくんですね。

最後は春休みに1泊2日で乗鞍へ行きます。入部したときは、右も左も分からなかったような生徒も1年でたくましくなりますよ。

- 皆さん、山岳部へはどんな動機で入ってくるんですか?

山好きで入ってくる子もいれば、友人と一緒に入ってくる子もいます。あと、他の運動部に比べるとちょっとゆるそうに見えるみたいですね。毎日練習しているイメージがないので。

- あまりゆるいイメージはないですが…実際は?

普段は地道ですよ。今日も隣の教室で、気象放送を聞いて天気図を書いていますし。トレーニングをして体力づくりもしますが、ベースにあるのは安全登山なので、読図や歩行の技術、あと泊まるとなると生活の技術も必要になります。そういう意味ではオールラウンドな「生きる力」を山岳部の活動の中で見つけてもらえればいいなと思っています。


あと3年で退職だという大西さんにとって、今、一番の悩みは後継者。県内で山岳部の指導ができる先生の数は少なく、そういう先生が山岳部のある学校に赴任するとも限りません。「県山岳総合センターとも協力してやっていきたいんですが、なかなか難しくて」。全国的にも山岳部の部員数が増えている中、養成は急務です。

PROFILE
1960年、長野県松本市生まれ。信州大学人文学部卒業後、国語教諭として県内各地の高校に勤務。2014年から現在の大町岳陽高校で山岳部顧問を務める。長野県山岳協会理事長、中信高等学校体育連盟登山副委員長、信濃高等学校教職員山岳会所属。「高校生に夢を」がモットー。

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