信州魅力発掘人

信州に魅せられ、活動する人たちの言葉には「信州の魅力」が凝縮されています。信州の魅力を掘り下げ、それを語る「信州魅力発掘人」。山の強さ、美しさ、厳しさ、素晴らしさを知る人たちが「山の魅力」を伝えます。

里山×鳥獣対策 vol.1

これまでにも何人かご紹介してきましたが、長野県内には個性豊かな山岳ガイドがたくさんいらっしゃいます。その中で、「クマに精通した山岳ガイド」として目に留まったのが、今回ご登場いただく、小山克(こやま まさる)さん。
小山さんは、以前は、エコツアーや環境教育事業を手掛ける「ピッキオ」の社員として、そして今は軽井沢町で有害鳥獣対策専門員として野生動物対策に尽力しています。役場に向かい、お話を伺いました。

野生動物対策は町づくりの一環とも・・・

- 有害鳥獣対策専門員、というのは何をしているんですか?

普段は主にサルの対策をしています。軽井沢町では、動物ごとに委託先が決まっていて、サル=町、クマ=NPO法人「ピッキオ」、シカ・イノシシ=猟友会、アライグマ、ハクビシン=NPO法人「生物多様性研究所あーすわーむ」となっています。

- 町はサルの対策を担当しているのですね。具体的にはどんなことを?

今は、2人1組2班体制で連日朝6時半から夕方まで、追い払いを行っています。私ともう一人のスタッフが対策専門員として、あとサル専属のスタッフが5人います。群れをできるだけ別荘が少ない山の奥まで追い上げています。最近はこの役場の周りまでは来ることが減りました。

- 以前はこの辺りにもサルが?

役場の屋根にもいましたよ。離山(はなれやま)を中心とした、住宅地、商業地エリアから、奥山側の別荘地エリアまで広く行動していました。

- 数は、どのくらい?

私たちが「K群」と呼んでいる一群が、現在、25頭前後生息しています。家の中に侵入したり、ベランダに糞をしたりという被害が出ています。捕獲する場合、国道18号線の北側は国に保護区に指定されていますし、住宅地、別荘地付近になると、基本的に銃は使用できません。

- 確かに、この辺りで銃を使うわけにはいかないですよね。

あと、群れの中には集団同士(個体間)で優劣の力関係があるので、影響力の強いサルを捕獲してしまうと、群れが分裂してしまう恐れがあります。分裂して被害が拡大したという地域も多くあるので、慎重に対応しています。

- 選んで捕まえないといけないのですね。

一頭一頭を見て、力が弱そうな、群れに支障がないであろう個体を選んで、毎年、駆除を行います。群れの動きに合わせて、檻を移動させ、檻に入ってくる個体を識別してから、捕まえます。

山中で行う、サル追い、罠設置等の作業

- 捕まえるのも大変ですね。町ではいつごろから対策を?

最初はピッキオで、群れの数など生息状況の調査を行いました。それから、対策案として、追い払いを実施するのはどうかと提案して。始めは猟友会が5年ほど続けて、その後、2008年からは町で行っています。

- 実際に対策をして、効果はどうですか?

毎年駆除している中で、現在の頭数は25頭前後まで減らしています。将来的には、人とサルが住み分けられたら良いのですが。軽井沢の場合は山の奥まで別荘があるので、住宅地、別荘地エリアから、順次、別荘地エリア、さらにその奥の国有林へと追い上げていきたいと考えています。

野生動物によって荒らされた、軽井沢の別荘のステータスでもある苔庭

- 最終的にはゼロに?

この群れを将来的に町としてどうするのかは、今後、協議していきたいと考えています。

- 他の地域でもこれだけの取り組みを行っているのでしょうか?

一つの群れにこれだけの期間、専属スタッフで追い払いを継続している地域は少ないと思います。ある程度、1頭1頭のサルの顔も識別しています。ちなみに、サルはボスが群れを引っ張っているのではなくて、母系集団といいますか、お母さんグループの集まりから群れが成立しています。 また、群れ内のお母さんグループ同士には、優劣の力関係もあるようです。

- 人間社会と似ていますね(苦笑)。


軽井沢ではサル以外にも、クマやシカ・イノシシも出没します。主にサルの対策をしながら、住民からの鳥獣に関する問い合わせの応対や、猟友会のシカ・イノシシの捕獲のサポートなども行っている小山さん。ついつい、サルの話に聞き入ってしまいましたが、次回は小山さんがずっと研究を続けてきたクマが登場します。

PROFILE
1968年、東京都・杉並区生まれ。東京農業大学在学中から、神奈川県丹沢山地でツキノワグマの調査研究に携わる。卒業後、株式会社野生動物保護管理事務所に勤務し、研究を継続。1999年、NPO法人ピッキオへ。軽井沢町の委託でツキノワグマ対策を行う傍ら、ガイドとしても活躍。2009年から現職。ニホンザルの対策・追い払いを中心に野生動物との軋轢の回避、普及啓発活動に尽力している。

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