信州魅力発掘人

信州に魅せられ、活動する人たちの言葉には「信州の魅力」が凝縮されています。信州の魅力を掘り下げ、それを語る「信州魅力発掘人」。山の強さ、美しさ、厳しさ、素晴らしさを知る人たちが「山の魅力」を伝えます。

ブナ林×大学准教授 vol.3

井田さんが自然や植物に興味を持ったきっかけは、小学校時代にさかのぼります。「今思えば、結構大きなきっかけだったのかも」という、そのエピソードとは?

森の楽しさを伝える“いだっち博士”として

- 井田さんはもともと、自然が好きな子どもだったんですか?

特別好きだったわけではないですね。普通に友達と野遊びをしていたくらいです。でも、小学校4年生のころの担任の先生が、割と外に連れ出してくれて。授業で校庭の樹木に名札を付けるなど、教科書に載ってないようなこともしてくれて、印象に残っています。

- そういう授業って、大人になっても覚えているもんですよね。

その先生が、外で遊ぶことも勉強につながるんだって思わせてくれたのかもしれないですね。別のそれで樹木の名前を覚えたというわけではないんですが…でも、体験は染みついている。知識を教えることではなく、方法を伝えることが大事なんだなって思います。

- 確かに…。

今の学生は、森とか植物とか、あまり詳しくないですけど、だからって知識を身につけろってことではないんです。大切なのはどう使うか。知っていることと、伝えることはまた別の話で、知識をいかに面白く伝えるかが重要です。ちょっとしたネタでいいから、2つ3つ、自然との遊び方を知っているような先生になってくれれば。

- そのために、大学ではどんなことを?

ベストな方法はまだ見つかっていませんが、まずは学生たちが楽しめるようなことをしていきたいです。「子どもの理科嫌い」って言われていますが、理科が嫌いな先生が理科を好きになれって教えるのは大変ですからね。せっかく1時間、授業の時間があるんだから楽しくやらないと。

- 学校もそうだし、学校以外でも「森を楽しむ」きっかけがあるといいですよね。

そうですよね。…例えば、どんなことができると思いますか?

- えっ、そう言われると…うーん、思い浮かびません…。

それを探したいですよね。やっぱり行ってみたいって思わせることがネックになってしまう。今、一つの方法として、あまりつながりのなさそうなところと一緒にイベントの企画をしてみています。

- 例えば、どんなイベントを?

最近、面白かったのは「キッズ薬膳」という、料理との組み合わせ。皆で森を散策してブナの実を集めて、料理して食べました。「旬のものを食べる」というアプローチなので、普段とはちょっと違う層の参加者が集まりました。子どもたちも里山を走り回って遊んでいたので、楽しんでもらえたと思います。

ブナの発芽

ブナの実

- 森と薬膳…ちょっと面白い組み合わせですね。

よくある観察会というと、興味がある人は来てくれますが、好きじゃない人にはちょっとハードルが高い。主催側としては安心感もあっていいんですが(笑)、来てくれる人の層を広げるしかけは、微々たるものでも考えていかないといけないですね。

- 井田さんにとっては、ちょっと「アウェイ」感があるくらいで。

そういう場だと、肩書が邪魔になったりもするんですが、子どもたちには「俺のことを先生と呼ぶな、『いだっち』って呼べ。いや、呼び捨ては何だから『いだっち博士』だ」とか(笑)。最初は大変でも、一人が呼んだら、皆もそう呼び出すものなので。

- 森の中だと、距離が縮まりやすい感じがします。

自然に助けてもらっていますね。まずは、山は山でも、里山から始めてもいいと思うんです。ドイツなどでは週末、森に行って散策するとう家族が多いんですが、信州だと、山って聞くと登山のイメージが強い。もっと身近に、気軽に、里山に行けるようになればいいなと思います。


教育学部には、あらゆる教科を専攻する学生がいて、理科、さらにその中で植物となるともともと興味を持っている学生はわずかだといいます。「そういう人たちが、学校の先生になって信州の自然を教えるというのはなかなか難しいし、伝わらない」と井田さん。自然の中に連れ出すことができれば、後は面白いことがたくさんあるはずだから-そんな思いを胸に、今日も“いだっち博士”は授業を始めます。

PROFILE
1968年、名古屋市生まれ。広島大学大学院生物圏科学研究科修了。1996年に長野県に移住し、長野県自然保護研究所へ。2000年から信州大学教育学部で教鞭をとる。専門は森林生態学で、森林動態の研究や里山の保全と活用にも取り組む。現在は飯山市で、家族と共に古民家で暮らす。

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