信州魅力発掘人

信州に魅せられ、活動する人たちの言葉には「信州の魅力」が凝縮されています。信州の魅力を掘り下げ、それを語る「信州魅力発掘人」。山の強さ、美しさ、厳しさ、素晴らしさを知る人たちが「山の魅力」を伝えます。

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実際の山で考え、判断してやり遂げることに醍醐味がある

多岐に渡る活動を行っている赤田さん。「今年は南極、戻ってきたら来年は山の仕事が中心になる」と話します。最近の山の様子を見て思うこと、さらに今後どのような活動を行っていきたいのかなどを伺いました。

収集した情報だけではなく、現場の状況から考える

- 最近の山の様子はどうですか?

報道ではよく「中高年の事故多発」といった表現で取り上げられていますが、実際には30代の事故もかなりあるように感じています。年配の人は経験があって、行動も慎重なので、例えば浮石なども確認しながら進むのですが、若いと体が動くのでポンポンと行ってしまう人もいる。若くても普段から体を動かしていない人だと、中高年よりも体力がないこともあります。これからは、若い人たちの事故も問題になっていくのではないかと危惧しています。

- どういう点に気を付ければよいのでしょうか?

今は登山装備が非常に良くなっていて、情報もたくさんあります。インターネットを使えば気軽に何でも調べることができますが、その情報を載せた人と自分自身の力量差を考慮しないといけないですよね。例えばルートも、自分で考えるのではなくてネットの情報に基づいて道を探そうとする。これは私の考え方なのですが、本来、フィールドワークは現場の状況から判断してやり遂げていくことに醍醐味がある。頭の中にある情報も大事ですが、その場で見たもので考えることが重要です。私はそういう登山をしていきたいですし、若い人にもその面白さを伝えていきたいと思っています。

- 赤田さんは、県山岳総合センターなどで講師も務めていらっしゃいます。

最近は山岳総合センターで受講する人も増えてきました。ガイドをお願いして、一緒に登りながらアドバイスをもらう人もいます。そういう場で学んでステップアップしていけるといいですね。もちろん、私もインターネットは使いますし、便利だと思います。でも、何でも最短時間で正解を出すことがいいわけではないですし、楽しさもないと思います。

- 実際の場と収集した情報をうまく組み合わせることができるといいですね。

昔は山岳会という組織が学習機能、教育機能を持っていたのだと思います。もちろん今も山岳会はありますが、集団は苦手という人もいるでしょう。そういう人でもガイドと一緒に登るのであれば、少人数でいけます。最近は頂上へ向かう人、澄んだ空気、眺めのいいところを楽しむ人など、登り方も多彩になってきました。ガイドもそれぞれ得意分野があるので、目的に合わせて選んでもらえるといいですね。

- ちなみに、赤田さんはどのような登山がお勧めですか?

常念小屋から見る槍ヶ岳夕景

ガイドをしているので人がいっぱい山に来てくれるのはありがたいのですが、本当は静かな山が私は好きです。人が少なくて、なおかつ手ごたえがあったり、味わいがあったりする山がいい。例えば「有明山」なんかは最高ですね。長野県には沢山の山があります。高い山、低い山、有名な山、あまり知られていない山。メジャーでなくても面白い山はたくさんありますし、自分に合った山を見つけて、楽しんでもらえればと思います。

これまで通りの活動と、若手の育成、キノコ

- これまでたくさんのことに取り組んできた赤田さんですが、今後はどんなことをしたいですか?

基本的にはこれまでと変わらず、ガイドの仕事、遭対協活動、山小屋の支援、登山道整備などをやっていきたいと思っています。実は先日まで、雷鳥の調査で乗鞍に行っていたのですが、動植物の研究や防災のための地形調査に同行して山に入ることもあります。登山道や一般ルートではないところにも入っていくので、個人的にも楽しいのですが、その辺は地元のガイドの強みになる部分。地理的にも更に精通していきたいと思っています。

乗鞍での雷鳥調査(2015.6.7)

- ガイド、といってもいろいろな仕事がありますね。

加えて、後進の育成も考えていきたいです。組合にも若い人が入ってきているので面倒をみていきたいですし、山岳総合センターの使命としても若い人たちを育てることには力を入れたいと思っています。あとは個人的に、キノコの世界に興味があるので、もっと勉強したいですね。

- キノコ?以前から植物に興味があったんですか?

乗鞍で見つけたベニテングダケ

そういうわけではないのですが、山の恵みを味わうことは日本の土着の文化というか古くから普通にあるものなので、大切にしたいと思っています。日本の山の文化は、明治時代にヨーロッパのアルピニズムが入ってきて、技術も道具も海外のものが主流になっています。しかし、日本にも昔から知識や技術を持っているマタギのような人たちがいる。食料の現地調達の方法など、もっと深く広く知りたいことがたくさんあります。

- では、キノコ博士を目指して。

以前は高所登山やクライミングに興味があったので、いつか再燃するかもしれませんが、今はキノコですね。まずは食べられるキノコを見分けられるようにならないといけないのですが、まだまだ昔からやっている人にはかないません。いずれは保健所からキノコ相談員の任命を受けるくらいにはなりたいです。


「継続して勉強しないとスキルアップできないどころか、ダウンしてしまう」と話す赤田さん。さまざまな活動をしながらも、資格の取得や更新などを行うなど、学びを欠かすことはありません。これから向かう南極で、そして戻ってきてから向かうであろう北アルプスで、どんなものを見て、何を伝えてくれるのか、とても楽しみです。

PROFILE

1967年、長野県北安曇郡池田町生まれ。大学卒業後にクライミングを始め、本格的に山の活動を開始。有明登山案内人組合、北アルプス南部地区遭対協などに所属し、県山岳総合センターで講師も務める。日本山岳協会山岳指導員、日本赤十字社救急法救急員・指導員、きのこ検定2級など数々の資格も。第57次南極地域観測隊員として2015年11月には、南極へ出発予定。

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