信州魅力発掘人

信州に魅せられ、活動する人たちの言葉には「信州の魅力」が凝縮されています。信州の魅力を掘り下げ、それを語る「信州魅力発掘人」。山の強さ、美しさ、厳しさ、素晴らしさを知る人たちが「山の魅力」を伝えます。

自然を守る仕組みがあって、その中で仕事をしている

国立公園という言葉は耳にしたことがあっても、いったいどういう公園なのかと問われると、すんなり答えられる人は少ないかもしれません。現在、国立公園の数は32。長野県内には「上信越高原国立公園」、「中部山岳国立公園」、「妙高戸隠連山国立公園」、「秩父多摩甲斐国立公園」、「南アルプス国立公園」の5つがあります。
11回目となる「信州魅力発掘人」、今回は環境省の自然保護官補佐(アクティブ・レンジャー)として働く則武敏史さんにご登場いただきます。アクティブ・レンジャーの仕事のことや、国立公園のこと、長野に来て10年という則武さんご自身の山への思いなどを伺いました。

保護だけではなく、多くの人に利用してもらうために

- 則武さんは、普段はどのようなお仕事をされているのでしょうか。

名前の通り、自然保護官を補佐するのが私たちの仕事です。自然保護官はアメリカの国立公園の「パークレンジャー」にならって1953(昭和28)年に配置されたことに始まります。現在は、全国7ブロックに配置されている地方環境事務所、その下に設置されている自然環境事務所や自然保護官事務所で国立公園の保護管理のほか、野生動物保護、外来生物対策、里地里山保全など多岐に渡る自然環境保全業務を行っています。

アクティブ・レンジャーはその補佐の役割で、2005(平成17)年度から全国に、志賀高原については2006年度に配置されました。普通は担当する現地の自然保護官事務所に配属され、常駐しています。私の場合は現在、上信越高原国立公園の志賀高原地域と中部山岳国立公園の後立山地域の2つの地域を担当しているので、2つの中間あたりにある長野自然環境事務所にて勤務をしています。
※志賀高原自然保護官事務所:長野県下高井郡山ノ内町平穏に設置されている。

- 具体的にはどのようなことを?

国立公園内では、優れた自然景観や多様な生物を守るため、工作物の新改増築、木竹の伐採、動物の捕獲や植物の採取などの行為を行う場合は環境大臣の許可が原則必要になります。自然保護官はそれらの申請の対応に加え、担当区域内の自然の状況や利用状況の把握、利用者指導、歩道等環境省施設の維持管理、地域関係者との連絡調整等も行います。自然保護官一人ではこれらの業務に対応しきれないので、アクティブ・レンジャーが代わりに現地に行って情報収集、利用者指導や歩道等環境省施設の維持管理を行ったり、地域関係者との連絡調整等の業務を手伝ったりしています。

- 上信越高原国立公園は、いつ国立公園になったんですか?

1949(昭和24)年です。広さは約14.8万ヘクタールあります。公園区域は特別保護地区・特別地域・普通地域など、その自然環境に応じた規制の違いを設けていますが、この区域については指定以来何度か見直されています。国立公園といっても、公園内の土地が全て国のものということではありません。特に志賀高原地域は民間の土地が広いので、それぞれの土地所有者と話し合いながら、調査や区域の見直しなどを進めています。

- 国立というのあで、国のものなのかと思っていましたが、違うんですね。

上信越高原国立公園全体では林野庁が管轄している国有林が約7割あるのですが、国立公園を管轄する環境省の土地はわずかです。上信越高原は山と高原の国立公園で、特に高原地域は商業施設なども多く、多くの方に利用されています。もともと国立公園自体は保護だけではなく適切に利用してもらおうという意図もあり、保護と適切な利用のバランスが重要と言えます。

奥中央は妙高戸隠連山国立公園の山。
奥左は中部山岳国立公園(もう一つの担当地区後立山地区)の山。手前の円錐形の山は笠ヶ岳。

利用者の立場から、利用者が楽しんでいるかどうか考える立場に

- 則武さんのご出身は愛知県ですが、もともと、自然や山に興味があったんですか?

振り返ってみると高校時代に山岳部に入ったことがきっかけだと思います。なぜ入ろうと思ったかはよく覚えてないのですが(苦笑)。最初はひたすら頂上を目指していましたが、顧問の先生が生き物の名前をいろいろと教えてくれて、周りにも目を向けるようになりました。そこから植物に興味を持つようになったのだと思います。大学は広島県へ。植物学を専攻し、卒業研究ではブナ林、その後は大学院に進み木曽の御嶽山でコケの研究をしていました。生き物を見ながら野山へ行くというサークルにも入っていたので、登山メインから、徐々に対象が変わっていった感じです。

- 以前から長野へも来ていたんですね。

年1回は来ていました。やはり高い山への憧れがあって、3000メートル級の山、槍ヶ岳や穂高岳という名前を聞くだけでも気分が高まります。夏でも雪があるのは新鮮で、植物も全然違う。ああいう景色を見ると、なかなか北アルプスから離れられないですね。

大学院を出てからは、広島で自然環境調査を行う民間企業に就職し、環境アセスメントの調査やビオトープの設計・提案などを行っていました。長野へ来たのは10年ほど前で、同じような仕事をしていました。

登山者カウンターのデータ確認作業の様子

- アクティブ・レンジャーになったのは?

アクティブ・レンジャーになって今年で5年目になります。応募したきっかけの一つは、前の仕事で行政の担当者と話すことも多く、行政の側で仕事をするのも面白いと思ったこと。もう一つは大学時代の同級生が環境省にいて、いい仕事をしていたこと。行政として自然保護に関わる仕事をしたいという気持ちがありました。

- 実際に携わるようになって、どうですか?

もちろん、組織の一員として仕事をしているわけですが、自分の力を発揮することで自然が守られていくという実感はあります。自然を守るための仕組みがあって、その中で仕事をしている。今までは自分も利用者の立場でしたが、視点が変わりました。歩いていても、壊れているところに目が行きますし、利用者がどのように楽しんでいるか、自然と親しんでいるかが気になるようになりましたね。


現在、長野自然環境事務所の管内にある3つの国立公園(上信越高原、中部山岳、妙高戸隠連山)では、9人のアクティブ・レンジャーが活躍しています。「志賀高原はもう『自分の庭』のようなものですか?」と聞くと、「公園内をくまなく歩くというわけにはいかず、なかなか行けない場所もあります」と則武さん。次回は、志賀高原のことや、今後の国立公園についてのお話を伺います。

PROFILE
1968年生まれ、愛知県出身。広島の大学に進学し、植物学を専攻。その後、民間企業に就職し、自然環境調査やビオトープの設計・提案に携わる。その後、長野市に移住し民間企業を経て2011年4月に環境省・自然保護官補佐(アクティブ・レンジャー)に。現在は上信越高原・志賀高原と中部山岳・後立山の2つの地域を担当。

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