信州魅力発掘人

信州に魅せられ、活動する人たちの言葉には「信州の魅力」が凝縮されています。信州の魅力を掘り下げ、それを語る「信州魅力発掘人」。山の強さ、美しさ、厳しさ、素晴らしさを知る人たちが「山の魅力」を伝えます。

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行政の境界を越えて、「地元の山」の魅力をつなげたい

トレイルランナー・大内さんが松本市役所に入所したのは1999年。当初は学校教育課や広報国際課など英語を活かした業務にあたっていました。現在所属する商工観光部観光温泉課は5つ目の部署。「トレイルランの経験を活かせる業務に就くことになるとは」という大内さんに、昨年から取り組んでいる「美ヶ原ロングトレイル」の活用などについて伺いました。


満足してもらえる企画を、続けていくことが大切

- 「美ヶ原ロングトレイル」について教えてください。

総延長約45キロメートルのロングトレイルで、松本市民の健康増進を図る目的で整備を行いました。北は四賀地区を起点に戸谷峰、武石峰を通り、日本百名山でもある美ヶ原高原王ヶ頭を目指します。北アルプス、南アルプス、富士山、八ヶ岳、浅間山と雄大な山々の眺望が堪能できる360度の大パノラマが広がるアルプス展望コースを抜け、茶臼山、三峰山、鉢伏山を通り南の起点である牛伏寺まで。平成21年度から整備が始まり、24年度に完了して、翌年度から本格的に活用するようになりました。

私は整備される前からずっとこのあたりは走っていて、良いコースだと思っていたので、本当に良い仕事をしていただいたなと思っています(笑)。

- 整備されるまではどうだったんですか?

以前は藪で、下草もそのままでした。人が通らないと道は廃道化してしまう。特に鉢伏山から三峰山までは本当に好きな人しか行かないような感じでしたね。整備されてないほうが好きだという人もいるのですが、今回の整備にはとても大きな意味があると思います。倒木を除いて、下草を刈って、安全に通れるようになったことで、誰もが楽しめるようになりました。

- 今は、どのような取り組みを?

松本観光コンベンション協会内に「松本スポーツコミッションプロジェクト」というものがあり、「松本の自然を使って多くの人に来ていただく」というコンセプトで活動しています。松本ならでは、松本にしかない自然を知ってもらうには「美ヶ原ロングトレイル」はピッタリ。ツアーやイベントを企画して、さまざまな楽しみ方を紹介しています。参加者は都市圏の人が中心です。「自分たちで行こうと思っているが、何かアドバイスが欲しい」という問い合わせをいただくこともあります。

- どのくらいの方が参加しているんですか?

ツアーは最大で20人ほど。参加者に充実した体験をしてもらおうと思うと、それ以上の人数は難しいと感じています。来てくれた人に満足してもらえれば、そこからまた広がっていく。それを続けていくことが大事だと思います。質は落とさず、継続性のあるものを企画していきたいですね。

- 大きなレースやイベントはやらないのですか?

「レースをやれば、人がたくさん来る」とよく言われますが、2000人の大会を1回やるよりも、200人の大会を10回やるほうが効果はあると思います。レースや大会で、そのときだけ人を集めるよりも、ゆっくりとした雰囲気の中で走ってもらったほうが良さが伝わるのではないでしょうか。

美ヶ原以外でも、設置されたチェックポイントを制限時間内に回って点数を競う「ロゲイニング」や、松本城から善光寺までの街道を走る「善光寺御開帳記念ウルトラオリエンテーリング」などにも携わっています。松本城と善光寺をつなぐのはロマンですよね。今年5月、御開帳に合わせて企画したのですが、反響が大きくて100人の定員がすぐにいっぱいになってしまいました。


「地元の人の山」も楽しい

- 大内さんが思う、長野県の山の魅力は?

山が多く、多彩なことですね。北アルプスのような高い山もあるし、地域の人に親しまれている山や、仕事で使う山もあります。いろいろな山があって、それぞれの良さがある。標高が高い山もいいですが、私は地域にある地元の人の山がとても好きなんです。

- 登山をするような山ではない、裏山みたいな山ですか?

山菜や薪を取りにいくような山ですね。そういう昔からずっと人が通っていた道を走ると、趣きを感じます。歴史や生活を感じ取れるというか、新しく整備したのではない人の感覚というか、息づかいがあります。

- 最近は、トレイルランをする人も増えてきましたね。

山登りからトレイルランを始める人もいれば、ロードランニングから始める人もいます。山登りから始めた人は山のルールを知っていますが、ランナーから始めた人の中には、ちょっと違う感覚の人もいるようです。登山者とトレイルランナーとの共存が問題になっている場所もありますが、お互いに相手を尊重する気持ちが大切。私は、声を掛けて相手が譲ってくれれば抜いていきますが、そうでなければ後ろからついていくこともあります。皆が気持ちよく過ごせるように、相手を思う気持ちを持ってほしいですね。

- 今後は、どのような活動を?

地域にこだわらず、アウトドアフィールドを広げていきたいです。私も市の職員なので、担当区域があるのは分かりますが、行政が引く線が実際の山に引いてあるわけではありません。境界を気にせずに、それぞれの良さをつなげてさらに魅力ある山の楽しみを紹介できればと思っています。


2010年、父・輝夫さんの伴走でアメリカの100マイルレースに出場。輝夫さんは2012年に66歳でウルトラトレイル・マウントフジに出場し、最高齢完走者の記録を持っています。「父が走っているので、その年までは走り続けないと」と笑顔を見せる大内さん。無理せず、気持ちよく走るからこそ続けられる。今後も、そんな思いと信州の豊かな自然の中を走る心地良さを多くの人に伝えてくれることでしょう。

PROFILE

1975年生まれ、名古屋出身。高校時代に自転車に興味を持ち、そこからトライアスロン、トレイルランニングの世界へ。大学卒業後、松本市役所に入所し、安曇野に移住。スポーツを活かしたまちづくりや地域の活性化を図る「松本スポーツコミッションプロジェクト」の推進に尽力している。

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