よむナガノ 県立長野図書館ブログ

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戦後70年特別展 『発禁 1925-1944;戦時体制下の図書館と「知る自由」』(1)

hakkin戦後70年の節目であるこの夏、県立長野図書館では特別展『発禁 1925-1944;戦時体制下の図書館と「知る自由」』を開催しています。

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当館には1925(大正14)年から1944(昭和19)年までの間の、発行禁止・閲覧禁止とされた本たちと図書館の日々の記録があります。

時の政府の検閲によって伏せ字となっている文章、ページが削除されている本、警察に差し押さえられ図書館から消えていった本、雑誌、新聞…。表現の自由そして知る自由が失われ、やがて戦争が始まります。

今回の特別展では、検閲体制下の県立図書館が日々残していた記録3点『新聞紙出版物発禁差押ニ関スル警察ヨリノ通報』『出版物差押通知接受簿』『発禁閲禁図書目録』と、図書没収の記録が残る上伊那図書館の『昭和十年度日誌』1点を主展示に据え、当時の図書館が置かれていた状況を通して、「知る自由」を見つめます。

図書館はみなさんが過去の「記憶」を語り継いでいくための「記録」を 、書籍やアーカイブとして収蔵し、提供しつづけます。みなさんがそれらをひもとき、今日そして明日の暮らしを考え、創るための「知る自由」の基盤であり続けたいと思います。




さて、これから何回かにわたりこの特別展「発禁 1925-1944」の内容をご紹介していきます。

まず1回目は、上記にもある主展示を取り上げます。

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『新聞紙出版物発禁差押ニ関スル警察ヨリノ通報』県立長野図書館.

第1冊 自昭和8年5月 至昭和8年12月  第2冊 自昭和9年1月1日 至昭和9年12月27日

この2点は当館に残された昭和8年・9年の発行禁止・閲覧禁止に関わる記録です。警察からの“出版物差押通知"が電話や文書でくるたびに、聞き取りもしくは転記して綴っていったのだと思われます。

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その綴ったものを目録の形にしたのがこちら。

『出版物差押通知接受簿』県立長野図書館.

昭和8年5月20日~昭和9年12月27日,昭和9年12月28日~昭和11年3月31日,昭和11年4月1日~昭和13年8月15日,昭和13年8月~昭和15年3月,昭和16年11月

「発禁となった資料名、通知を受けた日時、接受者」が淡々と記されています。 ここに記されているのは、当時発禁とされた資料全般であり、当館での所蔵の有無に関わらず記録をつけていたようです。

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そして、その『接受簿』の記録をもとに、実際に警察に差し押さえられたり、ページの削除をすることになった図書や雑誌の目録がこちらです。

『発禁閲禁図書目録』昭和10年2月~昭和19年7月 県立長野図書館.

赤丸がつけられているのは、差押さえられたものの戦後返還された資料と思われます。

 

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『昭和十年度 日誌 上伊那図書館』(伊那市創造館・伊那市立伊那図書館収蔵)

上伊那教育会が昭和5年に設立した郡図書館「上伊那図書館」の業務日誌です。こちらにも警察(伊那警察署)による」差押え、没収の記録が残っています。




昭和10年にあった「天皇機関説事件」。
これは東京帝国大学法学部教授美濃部達吉の憲法学説(「天皇機関説」)について、昭和10(1935)年2月18日に貴族院で貴族院議員菊池武夫(陸軍中将・在郷軍人議員)が、同学説は「団体に対する緩慢なる謀反」であり、美濃部は「学匪」「謀反人」であると非難して、政府に断固たる措置を求めたことから始まった事件です。

政府は議会終了後に美濃部を取り調べることを警察に指示するとともに、4月10日は出版法違反を理由に美濃部議員の著書『憲法撮要』『逐条憲法精義』『日本国憲法ノ基本主義』の3冊を発禁処分としました。

 

上記に掲載した写真をよく見ていただくと、この『憲法撮要』の記述がわかるかと思います。(『出版物差押通知接受簿』の見開きにしているページ右端、『発禁閲禁図書目録』の最下行)

『出版物差押通知接受簿』にある日付は4月10日。

政府が下した処分はその日のうちに、この長野の一図書館まで伝達されたんですね。

 

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『憲法撮要』美濃部達吉,有斐閣.1929.

これがその本です。当時、当館では版の異なる2冊を所蔵しており、両方とも警察へ提出した後返還されたようですが、現在はこの1冊しか残っていません。返還後、再度受入されました(右側写真:受入印の日付は「昭和21年5月25日」となっています。 )

 




 

国民が知らないところで、情報が消えていったこと。

そしてその行為に、本来「知る自由」を保障すべき機関である図書館が加担していたこと。

二度とそんな時代が来ないことを祈ります。

 

そしてなによりも、今日は70回目の終戦記念日。

この記録たちが、皆さまが今一度「平和とは何か」を考えるための材料となれば幸いです
 

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■『発禁 1925-1944;戦時体制下の図書館と「知る自由」』

期間:平成27年8月1日(土)~8月30日(日)

会場:県立長野図書館 視聴覚室(※18日からは2階一般図書室)

企画展のお知らせは当館HPをご覧下さい http://www.library.pref.nagano.jp/kikaku_1508

また、どのような資料が検閲対象となり、発禁・閲禁となったのかを知りたい方はぜひ当館HPの下記ページもご覧下さい。

『出版物差押通知接受簿』から見る「知る自由」

一部資料については、「国立国会図書館デジタルコレクション」で全ページ公開されているので、簡単に内容を確認することも出来ます。ぜひご利用ください。

 

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